【令和8年度】鹿児島県の海外出願支援事業とは?外国出願の費用を2分の1・上限300万円で補助する制度を専門家が解説
福田(聞き手)
白石さん、鹿児島県に「海外出願支援事業」という補助金があると聞きました。海外への出願、というのは特許のことでしょうか。
白石みなと(補助金活用アドバイザー)
そうです。制度の目的は、公募情報の言葉をそのまま引くと「中小企業の戦略的な外国出願を促進するため、外国への事業展開等を計画している中小企業等に対して、外国出願にかかる費用の半額を助成する」というものです。補助率は2分の1以内、1企業あたりの上限は300万円です。
福田
まず全体像をお願いします。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 制度名 | 【鹿児島県】令和8年度_中小企業等海外展開支援事業費補助金(海外出願支援事業) |
| 補助率 | 補助対象経費の2分の1以内 |
| 補助上限額 | 1企業あたり300万円(1案件あたりは権利種別ごとに別途上限あり) |
| 対象者 | 中小企業者、または中小企業者で構成されるグループ |
| 対象地域 | 鹿児島県 |
| 対象従業員規模(jGrants上の区分) | 300名以下 |
| 受付期間 | 2026年5月25日〜2026年11月13日 |
| 対象経費 | 外国特許庁への出願手数料、国内代理人・現地代理人費用、翻訳費用 |
福田
「外国出願」というのは、日本で出願したものを海外にも出す、ということですか。
白石みなと
その理解でほぼ合っています。この制度の最大の前提がそこでして、応募要件の1つ目に「応募時に既に日本国特許庁に対して特許、実用新案、意匠又は商標出願済みであり、採択後にその出願を基礎に優先権主張をして外国出願を年度内に行う予定であること」と書かれています。つまり日本での出願がまだの会社は、この時点では対象にならないんです。
福田
これから日本に出す、という段階ではだめだと。
白石みなと
はい。ただし例外の記載もあります。商標出願については優先権がない外国出願も可とされています。またPCT出願については「日本の特許出願を優先権主張の基礎にしないPCT出願(ダイレクトPCT出願を含む)については、日本への国内移行予定のものに限る」、ハーグ出願については「優先権がないハーグ出願については、出願時に日本国を指定締約国に含むものに限る」という条件がついています。
福田
要件は他にもありますか。
白石みなと
全部で4つあります。2つ目が「先行技術調査等の結果からみて、外国での権利取得の可能性が明らかに否定されないこと」。3つ目が「外国で権利が成立した場合等において『当該権利を活用した事業展開を計画している』又は『商標出願に関し、外国における抜け駆け商標出願対策の意思を有している』こと」。4つ目が「外国出願に必要な資金能力及び資金計画を有していること」です。
福田
3つ目にある「抜け駆け商標」というのは。
白石みなと
公募情報に定義が書かれています。日本国において既に出願又は登録済みの商標が、海外において第三者により無断で出願・登録された商標のことです。自社のブランド名を海外で勝手に取られてしまう、という事態への対策ですね。後で触れますが、この抜け駆け対策商標には専用の上限額が設定されています。
福田
対象になるのはどんな会社ですか。
白石みなと
「中小企業者又は中小企業者で構成されるグループ」が対象です。グループの場合は構成員のうち中小企業者が3分の2以上を占めるものとされています。jGrants上の従業員規模の区分は300名以下です。
福田
「みなし大企業は除く」と聞きましたが、どこからがみなし大企業になるのでしょう。
白石みなと
5つの類型が明記されています。表にします。
| 記号 | みなし大企業に該当する要件 |
|---|---|
| ア | 発行済株式の総数又は出資価格の総額の2分の1以上を同一の大企業が所有している中小企業者等 |
| イ | 発行済株式の総数又は出資価格の総額の3分の2以上を複数の大企業が所有している中小企業者等 |
| ウ | 大企業の役員又は職員を兼ねている者が、役員総数の2分の1以上を占めている中小企業者等 |
| エ | 資本金又は出資の総額が5億円以上の法人に直接又は間接に100%の株式を保有される中小企業者等 |
| オ | 間接補助金申請時において、確定している(申告済みの)直近過去3年分の各年又は各事業年度の課税所得の年平均額が15億円を超える中小企業者等 |
福田
オの「課税所得の年平均額が15億円を超える」は、かなり規模の大きい会社ですね。
白石みなと
そうですね。ア〜ウは資本関係と役員構成、エは親会社の資本金、オは所得です。自社が中小企業者だと思っていても、親会社の資本金が5億円以上で100%子会社なら、エに当たって対象外になります。資本関係は必ず確認してください。
福田
中小企業以外が使えるケースはありますか。
白石みなと
1つあります。地域団体商標の外国出願については商工会議所、商工会、NPO法人等が対象と明記されています。産地のブランド名を守る、という性格の出願ですね。
福田
補助の対象になる経費を教えてください。
白石みなと
3つに限定されています。
| 番号 | 助成対象経費 |
|---|---|
| ① | 外国特許庁への出願手数料 |
| ② | ①に要する国内代理人・現地代理人費用 |
| ③ | ①に要する翻訳費用 |
福田
かなり絞られていますね。
白石みなと
はい。出願そのものにかかる費用に限られています。逆に言えば、弁理士に払う国内代理人費用と、現地の代理人費用、それに翻訳費用という、外国出願で実際に負担の大きい部分がきちんと入っています。
福田
金額の上限が「1企業あたり」と「1案件あたり」で分かれていました。
白石みなと
ここがこの制度でいちばん読み間違えやすいところです。1企業あたりの上限が300万円、これは複数案件を申請した場合の合計の上限です。そのうえで1案件あたりの上限が権利の種類ごとに決まっています。
| 権利の種類 | 1案件あたりの上限額 |
|---|---|
| 特許 | 150万円 |
| 実用新案・意匠・商標 | それぞれ60万円 |
| 抜け駆け対策商標 | 30万円 |
福田
特許1案件だけなら150万円が上限で、300万円には届かないということですか。
白石みなと
そのとおりです。300万円は1企業あたりの上限額で、公募情報でも「1企業あたり:300万円(複数案件の場合)」と書かれています。1案件だけを申請する場合に届く額ではありません。上限額と補助率は必ずセットで確認してください。
福田
複数案件を出したい場合の手続きは。
白石みなと
公募情報に「複数案件申請される場合は、案件の数だけお申し込みください」と書かれています。1回の申請にまとめるのではなく、案件ごとに申し込むという運用です。
福田
受付の期間を教えてください。
白石みなと
2026年5月25日から2026年11月13日までです。締切日には時刻の指定があり、11月13日の17時00分と明記されています。
福田
jGrantsから申請すれば完了ですか。
白石みなと
ここは絶対に間違えないでください。公募情報に「jGrants上に入力しただけでは、申請受付となりません」とはっきり書かれています。交付申請書及び添付書類を郵送で提出すること、しかも11月13日17時00分必着とされています。あわせて交付申請書のWord版を電子メールで送付することも求められています。
福田
電子申請だけで完結する制度に慣れていると、見落としそうですね。
白石みなと
郵送が「必着」である点も重要です。消印ではなく到着で判断されますから、締切当日に投函しても間に合いません。逆算して動いてください。
福田
採択された後に何かありますか。
白石みなと
2つ書かれています。1つは採択された場合は、企業名・所在地等について公表されること。もう1つは事業完了後5年間の状況調査(フォローアップ調査、ヒアリング等)が行われることです。5年間の付き合いになる制度だとお考えください。
福田
最後に、どこを見れば正確な情報が得られますか。
白石みなと
この制度のjGrantsの掲載ページが入口になります。
要件と申請様式については、掲載ページの詳細欄にある公募要領を必ずご確認ください。
福田
問い合わせ先は分かりますか。
白石みなと
掲載情報に「本補助金事業に関する問合せ先・書類提出先」として記載があります。郵送の提出先も同じ窓口です。
| 項目 | 記載内容 |
|---|---|
| 組織名 | 公益財団法人かごしま産業支援センター |
| 部署名 | 産業振興課 |
| 郵送提出先 | 〒892-0853 鹿児島市城山町1番24号 鹿児島県中小企業会館4階 |
| Tel | 099-219-1272 |
| ikusei@kisc.or.jp |
福田
ありがとうございました。
白石みなと
本記事はjGrantsに掲載されている内容をもとにしています。制度の内容・締切・予算の状況は変更されることがありますので、申請前には必ず最新の公募要領をご確認ください。
なお、補助金の申請書の作成代行・提出代行は行っておりません。制度情報の提供と、必要に応じた専門家のご紹介までとさせていただきます。