人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)とは?就労環境整備で最大80万円を助成する制度を専門家が解説
福田(聞き手)
白石さん、今回は「人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)」です。名前から外国人材向けの制度だとは分かるのですが、具体的に何を助成してくれるんでしょうか。
白石みなと(補助金活用アドバイザー)
公募情報の言葉を引くと、「外国人労働者は、日本の労働法制や雇用慣行などの知識の不足や言語の違いなどから、労働条件・解雇などに関するトラブルが生じやすい傾向にある」ことを踏まえ、外国人特有の事情に配慮した就労環境の整備を行い、外国人労働者の職場定着に取り組む事業主に対して助成する制度です。設備投資や研修費を助成する制度とは仕組みが異なります。
福田
研修費とは違う、というのは意外です。どういう仕組みなんですか。
白石みなと
はい。この制度は経費の実費を助成するものではなく、決められた就労環境整備措置を導入・実施した実績に対して定額を支給する仕組みです。まずは全体像を表にまとめます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 制度名 | 人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース) |
| 実施機関 | 厚生労働省 |
| 支給額 | 1制度導入につき20万円、上限80万円 |
| 支給単位 | 事業主単位(企業単位)。事業所単位では支給されない |
| 対象者 | 雇用保険適用事業所の事業主(雇用保険被保険者となる外国人労働者を雇用している事業主) |
| 対象地域 | 全国 |
| 受付期間 | 就労環境整備計画期間に応じて事業主ごとに変動(一律の締切なし) |
福田
「雇用保険被保険者となる外国人労働者」とありますが、どんな人でも対象になるんですか。
白石みなと
そこは除外規定があります。公募情報では特別永住者及び在留資格「外交」「公用」を除くとされています。この2つの在留資格は他の在留資格と法的な位置づけが異なるため、対象から外れていると考えられます。
福田
では、実際にどんな取り組みをすれば助成の対象になるんでしょうか。
白石みなと
「就労環境整備措置」として5項目が示されていて、イとロの措置に加え、ハ〜ホのいずれかの措置を新たに導入し、実施することが必要です。イ・ロは必須、ハ〜ホは選択、という組み合わせになっています。
福田
5項目の中身を教えてください。
白石みなと
公募情報をそのまま整理すると、こうなります。
| # | 就労環境整備措置 | 内容の概要 |
|---|---|---|
| イ | 雇用労務責任者の選任 | 事業所ごとに選任し氏名を周知、外国人労働者と1回以上の面談を行い結果を書面化 |
| ロ | 就業規則等の多言語化 | 就業規則・労働協約・労働条件通知書・雇用契約書のいずれかを外国人労働者の母国語等または平易な日本語で多言語化し周知 |
| ハ | 苦情・相談体制の整備 | 相談窓口の設置、通訳同席の個別面談、専用電話・メールの開設等を就業規則等の変更により新たに定め周知 |
| ニ | 一時帰国のための休暇制度の整備 | 一時帰国を希望した場合に取得できる有給休暇(年次有給休暇を除く)を新たに定め、1年間に1回以上連続5日以上取得可能とする |
| ホ | 社内マニュアル・標識類等の多言語化 | 労使協約・育児介護休業規定・安全衛生等のマニュアル・標識類を多言語化し周知 |
福田
イとロは必ずやらないといけない、ということですね。
白石みなと
そのとおりです。イの「雇用労務責任者の選任」は、単に肩書きを置くだけでなく、外国人労働者と1回以上の面談(テレビ電話による面談を含む)を行い、結果を書面で作成することまで求められています。ロの「就業規則等の多言語化」は、就業規則・労働協約・労働条件通知書・雇用契約書のうちいずれか1つを多言語化すれば足りる、という読み方になります。
福田
ハ〜ホはどれか1つを選べばいいんですか。
白石みなと
はい。ハ〜ホのうちいずれか1つを新たに導入すれば要件を満たします。たとえばニの「一時帰国のための休暇制度」は、1年間に1回以上、連続5日以上の休暇を取得できる制度であることが条件で、単に休暇制度を作ればよいわけではなく、この具体的な日数要件を満たす必要があります。
福田
先ほど「経費を助成するものではない」とおっしゃっていましたが、委託した場合の費用はどうなるんでしょうか。
白石みなと
ここは誤解しやすいポイントです。公募情報には、就労環境整備措置に係る業務を外部機関等に委託した場合、通訳費・翻訳機導入費・翻訳料・委託料等が「支給対象経費」として考えられる旨の記載があるとされています。ただし、これは委託時の実費の目安を示したものであり、支給額自体は制度導入数に応じた定額(20万円単位)で、経費の実費や割合に応じて変動するものではありません。対象経費の一覧・費用項目のような章自体が存在しない、という点も公募情報に明記されています。
福田
つまり、実際にいくら使ったかとは関係なく、20万円ずつもらえるということですか。
白石みなと
基本的にはそういう理解になります。措置を1つ導入すれば20万円、複数の措置を導入すれば導入数に応じて積み上がり、上限は80万円です。実費の多寡で増減する仕組みではない、という点が他の助成金と大きく違います。
福田
対象になる事業主の要件を教えてください。
白石みなと
公募情報では次の点が挙げられています。
| # | 対象事業主の要件 |
|---|---|
| ① | 雇用保険の適用事業の事業主であること |
| ② | 外国人雇用状況届出を適正に届け出ている事業主であること |
| ③ | 認定された就労環境整備計画に基づき、計画期間内にイ・ロの措置に加え、ハ〜ホのいずれかの措置を新たに導入し、実施した事業主であること |
| ④ | 事業主の全ての事業所において雇用する外国人労働者を解雇等していない事業主であること |
| ⑤ | 外国人労働者離職率が15%以下となっている事業主であること |
福田
⑤の離職率は、どう計算するんですか。
白石みなと
公募情報に補足があります。離職率算定期間の初日における外国人労働者数が2人以上10人以下の場合は、離職者数が1人以下であることとされています。人数の少ない事業主では「率」だけで判定すると1人の離職で基準を割ってしまうため、実数での基準も併記されているという理解です。
福田
④の「解雇等していない」というのも気になります。
白石みなと
公募情報では「事業主の全ての事業所において雇用する外国人労働者を解雇等していない事業主であること」とだけ示されています。どの範囲の行為が「解雇等」に含まれるかの詳細までは、この資料からは分かりません。個別の状況については、後ほど案内する問い合わせ先にご確認いただくのが確実です。
福田
受付期間について、もう少し詳しく教えてください。
白石みなと
ここは他の補助金と仕組みが異なります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 就労環境整備計画期間 | 3か月以上1年以内で事業主が任意に設定 |
| 計画の提出期間 | 計画期間の初日から6か月前の日から1か月前の日まで |
| 一律の締切 | jGrantsのような一律の公募締切日はない |
福田
毎回、事業主ごとに提出タイミングが違うということですね。
白石みなと
そのとおりです。計画期間を事業主が自分で決め、その初日を基準に6か月前から1か月前までの間に計画を提出する、という組み立てです。年に1回の締切を待つ制度ではないので、取り組みを始めたい時期から逆算して計画期間を設定する必要があります。
福田
最後に、支給額の考え方をもう一度整理してもらえますか。
白石みなと
まとめるとこうなります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 支給額 | 1制度導入につき20万円 |
| 上限額 | 80万円 |
| 支給単位 | 事業主単位(企業単位)。事業所単位では支給されない |
| 助成率の概念 | なし(定額支給) |
福田
「事業主単位」というのは、複数の事業所を持っていても会社全体で80万円が上限、ということですか。
白石みなと
そのように読めます。公募情報には「本助成金(本コース)は事業主単位(企業単位)で支給し、事業所単位では支給されません」と明記されています。事業所を複数持つ企業が、それぞれの事業所で別々に80万円ずつ受け取れる仕組みではない、という点は誤解しやすいので注意が必要です。
福田
問い合わせ先を教えてください。
白石みなと
公募情報にはこう案内されています。
| 項目 | 記載内容 |
|---|---|
| 問合せ先 | 事業所の所在地を管轄する都道府県労働局・ハローワーク |
福田
共通のコールセンター番号のようなものはないんですね。
白石みなと
はい。この資料には共通のコールセンター番号の記載はなく、事業所所在地を管轄する都道府県労働局・ハローワークへの問い合わせが案内されています。認定計画に基づく制度でもあるため、計画の立て方も含めて早めに管轄の窓口へ相談されることをおすすめします。
福田
最後に、正確な情報はどこで確認できますか。
白石みなと
厚生労働省が公開している資料が出典です。
福田
ありがとうございました。
白石みなと
本記事は厚生労働省の公開資料をもとにしています。制度の内容・要件・支給額は変更されることがありますので、申請前には必ず最新の資料をご確認ください。
なお、対象になり得るかどうかは事業主ごとの雇用状況や就労環境整備の実施内容によって個別の判断になりますので、「対象です」と断定はできません。また、本助成金の支給申請書の作成代行・提出代行は社会保険労務士の独占業務です。当方では申請書の作成・提出の代行は行っておりません。制度情報の提供と、必要に応じた社会保険労務士のご紹介までとさせていただきます。
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この制度は全国が対象で、特定の自治体の企業に絞った制度ではありません。そのため、同一自治体の他制度からの案内はできませんでしたが、代わりに同じ厚生労働省が実施する人材・雇用関連の助成金を紹介します。
白石みなと
いずれも厚生労働省の助成金ですが、対象になる要件はこの制度とはそれぞれ異なります。対象になり得るかは、各制度のページで個別にご確認ください。併用の可否は各制度の実施機関にご確認ください。
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