結論から

福田(聞き手)
最近、「補助金は調査が入ることがある」と聞きました。実績報告を出して入金されたら、それで終わりではないのでしょうか。

白石みなと(補助金活用アドバイザー)
そこは誤解が起きやすいところです。現地調査は、申請書や実績報告書に書いた内容が、実際にそのとおりになっているかを確かめるための手続きです。書類の上では整っていても、現物が無い・置き場所が違う・すでに手放していた、ということがあり得るため、書類とは別に現物を見に来る仕組みが用意されています。
そして、調査が来るのは実績報告のときだけではありません。補助事業が終わってから数年のあいだ、思い出した頃に来ることもあります。「もう終わった話」と考えず、どんなときに何を見られるのかを、順番に見ていきましょう。
1. 現地調査は、誰が何のために来るのか

福田(聞き手)
そもそも、調査には誰が来るのでしょうか。

白石みなと(補助金活用アドバイザー)
補助金の交付元にあたる、省庁や自治体の担当課、あるいは事務局として委託を受けた機関の職員が来ることが一般的です。国の補助金では、これとは別に会計検査院による検査の対象になることもあります。事前に日程の連絡が入ることが多いですが、この点は制度によって扱いに差があります。
来る目的は、申請書・実績報告書に書かれた内容と、実際の状態が一致しているかどうかの確認です。審査や実績報告の段階では書類でしか確認できなかったことを、実物を見て裏付ける手続きだと考えてください。
2. 調査が来るのは、実績報告のときだけではない

福田(聞き手)
実績報告を出して、入金も終わったあとに調査が来ることもあるんですか。

白石みなと(補助金活用アドバイザー)
あります。補助事業が終わってから数年のあいだ、期間を置いて調査が行われることがあります。これは、あとの章で説明する「処分の制限」や「書類の保存」といった義務が、事業完了後もしばらく続く制度が多いためです。義務が続いている以上、その状態を確かめる調査も、同じ期間のあいだ行われる余地があります。

福田(聞き手)
どのくらいの期間、その状態を続ける必要があるのか、あらかじめ知っておくことはできますか。

白石みなと(補助金活用アドバイザー)
続く期間は制度によって違い、交付決定通知書や交付規程、実施要領といった書類に定められています。「いつまでこの状態を保てばよいか」は、事業が終わった時点で確認しておくと、あとになって慌てずに済みます。
3. 現地で具体的に何を見られるのか

福田(聞き手)
実際に調査が来たら、何を見られるのでしょうか。

白石みなと(補助金活用アドバイザー)
代表的には、次のようなものが対象になります。
- 補助金で取得した設備の現物が、実際にあるかどうか
- 設備に貼られた管理番号や、補助事業で取得した旨を示す表示
- 申請書に書いた設置場所に、そのとおり置かれているか
- 取得や運用の経緯を示す帳簿
- 契約書や見積書など、取引の内容を示す書類
- 実際にお金がどう動いたかを示す、支払の記録
現物と書類の両方がそろって、初めて「確認できた」ことになります。設備はあるが管理番号の表示が無い、帳簿はあるが現物が見当たらない、といった食い違いがあると、その場で説明を求められることになります。
4. 補助金で買ったものは、勝手に処分できない

福田(聞き手)
調査のときに、もし「もう使っていない」という状態だったらどうなりますか。

白石みなと(補助金活用アドバイザー)
そこは注意が必要な点です。補助金で取得したものには、処分の制限がかかっていることが多くあります。事前の承認を受けずに処分してしまうと、現地調査でまさにその現物を確認できず、そこで初めて発覚する、という流れになりがちです。処分の制限のほか、設置場所の変更や書類の保存についても、次の章から順に見ていきます。
5. 設置場所を変えたときは、届け出が要ることがある

福田(聞き手)
処分ではなく、置き場所を変えるだけならどうでしょうか。同じ会社の中で別の事業所に移す、といった場合です。

白石みなと(補助金活用アドバイザー)
その場合も、油断はできません。設備を別の事業所へ動かしたときは、届け出が必要になることがあります。申請書に書かれた設置場所は、現地調査でまさに確認される項目の一つで、書かれた場所に無ければそれだけで確認が止まってしまいます。
6. 書類の保存期間は、制度ごとに違う

福田(聞き手)
帳簿や契約書といった書類は、いつまで残しておけばいいのでしょうか。

白石みなと(補助金活用アドバイザー)
書類の保存期間は、制度ごとに定められています。現地調査が事業完了後に行われる余地がある以上、そのときに見せられる状態で保管しておく必要があります。
7. 調査で説明できないと、どうなるのか

福田(聞き手)
もし調査のときにうまく説明できなかったら、どうなってしまうのでしょうか。

白石みなと(補助金活用アドバイザー)
説明ができないと、補助金の返還を求められる場合があります。現物が無い、書類がそろわない、届け出るべき変更を届け出ていなかった、といった状態は、いずれも「書いたとおりに使い続けている」ことを裏付けられない状態にあたるためです。
とはいえ、調査は事業者を追い詰めるためのものではなく、書いたことと実態を確認するための手続きです。説明に困る事情ができたときほど、調査の当日まで抱え込まず、早めに交付元へ伝えておくほうが、結果的に話がこじれずに済みます。
よくある質問
Q. 現地調査は、必ず事前に連絡があるものですか。
A. 多くの場合は日程の連絡があります。ただし、連絡の有無や時期は制度によって扱いが異なるため、通知が来ないからといって調査が無いとは限りません。
Q. 調査で指摘を受けた場合、その場で答えられなくても大丈夫ですか。
A. その場で全て答えられなくても、後日書類を整えて説明できれば問題にならないことがあります。曖昧なまま済ませず、いつまでに何を提出すればよいかを、その場で確認しておくとよいでしょう。
Q. 調査への対応を、社会保険労務士などの専門家に任せることはできますか。
A. 現地調査そのものへの立ち会いや相談はできますが、申請書類の作成・提出代行は社会保険労務士など専門資格者の業務範囲に関わります。労務に関する助成金であれば社会保険労務士、そのほかの補助金であれば商工会・商工会議所や中小企業診断士が相談先になり得ます。
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具体的な制度を探す場合は、目的から見るのが近道です。
調査の対象範囲や、保存すべき書類の期間は制度ごとに異なります。この記事に具体的な期間を書いていないのはそのためです。調査の連絡を受けたときや、処分・移設を検討するときは、自己判断せず、必ず交付元にご確認ください。