1. 結論から:丸投げはできない、確認すべき点がある

福田(聞き手)
補助金の申請を代行しますという営業を受けました。頼んでもよいものなのでしょうか。

白石みなと(補助金活用アドバイザー)
依頼すること自体は問題ではありません。ただし、確認せずに契約すると、あとで困ることがあります。雇用関係の助成金は資格の無い業者には代行できないこと、業者への支払いは補助の対象にならないことが多いこと、そして契約の中身を確認しないまま進めると、採択されたあとの手続きで自社が行き詰まることがあるという3点は、契約前に知っておいてください。順番に見ていきます。
2. 雇用関係の助成金は、資格が無いと代行できない

福田(聞き手)
「申請代行」といっても、誰でもできる仕事ではないのでしょうか。

白石みなと(補助金活用アドバイザー)
制度によって違います。雇用関係の助成金(人材開発支援助成金や業務改善助成金など、厚生労働省系の助成金)については、申請書の作成・提出を報酬を得て代行することが、社会保険労務士の独占業務として法律で定められています。資格を持たない業者がこれを行うことはできません。
一方、経済産業省・中小企業庁系の補助金(ものづくり補助金やjGrants経由の制度など)には、こうした独占業務の定めはありません。資格が要らないからといって、誰に頼んでも同じというわけではない、という点はこのあとの項目で見ていきます。

福田(聞き手)
営業してきた業者が、その資格を持っているかどうかは、どう確認すればよいのでしょうか。

白石みなと(補助金活用アドバイザー)
社会保険労務士であれば、都道府県の社会保険労務士会に登録されています。本人に登録の有無を確認するか、社会保険労務士会の名簿と照合することで確かめられます。雇用関係の助成金の代行を持ちかけられたときは、契約の前にこの点をはっきり確認しておくべきです。資格を確認しないまま契約し、あとから代行できない業務だったと分かる、という事態は避けたいところです。
3. 申請書作成の費用は、補助の対象になりにくい

福田(聞き手)
業者に払う費用も、補助金から出せるのではないかと考えていました。

白石みなと(補助金活用アドバイザー)
そう考えたくなりますが、多くの制度で申請書の作成そのものは補助の対象外です。補助金・助成金は事業を実施するための費用を支援する仕組みで、申請の準備そのものは事業の実施にあたらない、という整理をしている制度が多いためです。
つまり、業者への支払いは基本的に自己負担になる、という前提で契約を検討する必要があります。対象になり得る専門家費用があるかどうかは制度ごとに違うので、契約前に狙っている制度の公募要領で対象経費の欄を確認しておくと安心です。
4. 成功報酬型の契約で、気をつけたいこと

福田(聞き手)
「着手金は無料で、採択されたら成功報酬をいただきます」という説明を受けました。これは良心的な契約なのでしょうか。

白石みなと(補助金活用アドバイザー)
着手金が無い分、依頼する側が最初に負うリスクは小さく見えます。ただし、成功報酬の割合が高い契約だと、採択されて受け取った補助金のうち、自社の手元に残る金額が大きく目減りすることがあります。何のために申請したのかを思い返すと、手元に残る金額が小さすぎては本末転倒です。

福田(聞き手)
その割合は、どこを見て判断すればよいのでしょうか。

白石みなと(補助金活用アドバイザー)
契約書に、成功報酬の算定方法がどう書かれているかを確認してください。補助金の交付が決まった額に対する割合なのか、実際に入金された額に対する割合なのか、消費税は別なのかによっても、最終的に手元に残る額は変わります。口頭の説明だけで判断せず、書面に落とされた計算方法を確認することをおすすめします。
5. 契約前に確認しておきたいこと

福田(聞き手)
ほかにも、契約の前に見ておくべき点はありますか。

白石みなと(補助金活用アドバイザー)
ここまでの内容も含めて、契約前に確認しておきたい点を整理します。
- 資格の有無……雇用関係の助成金であれば、社会保険労務士かどうか
- 報酬の算定方法……成功報酬の割合の基準、着手金の有無、消費税の扱い
- 不採択のときの扱い……着手金が戻るのか、不採択でも発生する費用があるのか
- どこまでやってくれるのか……申請書の作成までなのか、採択後の実績報告まで含むのか
とくに最後の「どこまでやってくれるのか」は見落とされがちです。申請書の提出までを請け負う契約なのか、採択後の実績報告まで含む契約なのかで、自社がやることは大きく変わります。次の項目で、この違いが実際にどう影響するかを見ていきます。
6. 丸投げすると、あとで自社が困る理由

福田(聞き手)
申請書の作成を丸ごと任せてしまえば、社内の手間は減らせるように思うのですが。

白石みなと(補助金活用アドバイザー)
申請書の作成までは、たしかに手間を減らせます。ただし、採択されたあとには実績報告という手続きが控えており、ここは業者に任せきれない部分が残ります。実績報告では、計画どおりに事業を実施したことを、自社が証拠書類とともに示す必要があります。

福田(聞き手)
実際に手を動かすのは自社なので、そこは当然かもしれませんね。

白石みなと(補助金活用アドバイザー)
そのとおりです。計画の中身、たとえば何のためにその設備を入れるのか、どう使うのかといった部分は、自社にしか書けません。業者が代わりに書いた計画書の中身を、依頼した本人が説明できない、という状態で実績報告の段階を迎えると、そこで行き詰まります。申請書の作成は誰かに手伝ってもらえても、計画の中身そのものは、自社が理解して答えられる状態にしておく必要があります。

福田(聞き手)
実績報告は採択されたあとの話ですよね。始める前の段階で、自社が用意しておくべきものはあるのでしょうか。

白石みなと(補助金活用アドバイザー)
あります。雇用関係の助成金、たとえば人材開発支援助成金では、多くの場合、訓練を始める前に「訓練計画届」(職業訓練実施計画届)の提出が必要です。これも実績報告と同じ理由で、業者に作成を手伝ってもらえたとしても、どんな訓練をなぜ行うのかという中身は、自社が理解して答えられる状態にしておく必要があります。始める前と終わったあと、両方の段階で「中身を自社が説明できるか」が問われると考えておくとよいでしょう。
7. 無料で相談できる公的な窓口もある

福田(聞き手)
有料の業者に頼む前に、まず無料で相談できるところはないのでしょうか。

白石みなと(補助金活用アドバイザー)
あります。商工会・商工会議所、よろず支援拠点、各県の産業振興財団・中小企業支援センターは、いずれも無料で相談を受け付けています。雇用関係の助成金であれば、都道府県労働局やハローワークも窓口になります。制度の対象になり得るかどうかや、必要な書類についての案内を受けられます。まずこうした窓口で相談し、そのうえで有料の代行が必要かどうかを判断する順番がおすすめです。

福田(聞き手)
無料の窓口と、有料の業者では、何が違うのでしょうか。

白石みなと(補助金活用アドバイザー)
無料の窓口は、情報提供や書き方の助言が中心で、申請書の作成そのものを引き受けるわけではないことが多いです。作成そのものを任せたい場合は、結局どこかで有料の依頼になります。だからこそ、まず無料の窓口で制度の見当をつけ、そのうえで代行が必要な部分だけを見極めるという進め方が無駄がありません。
8. 当サイトの立場

福田(聞き手)
このサイトを運営しているDXコンサルティングジャパンは、申請の代行を行っているのでしょうか。

白石みなと(補助金活用アドバイザー)
いいえ。当サイトを運営するDXコンサルティングジャパンも、申請書の作成・提出の代行は行っていません。制度の情報提供や、書類のテンプレート準備、必要に応じた社会保険労務士の紹介までにとどめています。この記事も、特定の業者を勧めるためではなく、営業を受けた際にご自身で判断できる材料を整理する目的で書いています。
よくある質問
Q. 資格を持たない業者に相談すること自体は、問題になりますか。
A. 経営相談や事業計画の作り方そのものについて話を聞くことは、資格が無くても問題ありません。問題になるのは、雇用関係の助成金について、報酬を得て申請書の作成・提出を代行する部分です。相談と代行の境目は契約の中身によるため、契約前に「どこまでやってもらうのか」を書面で確認しておくことをおすすめします。
Q. 成功報酬型の契約は、避けたほうがよいのでしょうか。
A. 成功報酬型そのものが問題というわけではありません。着手金なしで依頼できる分、リスクを抑えられる面もあります。確認すべきは割合の高さと、その算定方法が契約書に明記されているかどうかです。
Q. 不採択になった場合、支払った費用は戻ってきますか。
A. 契約の内容によって異なります。完全成功報酬型であれば不採択時の負担は小さくなりますが、着手金がある契約では戻らないこともあります。この扱いは契約書に明記されているはずなので、契約前に確認しておきたい点の一つです。
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契約を検討する前に、まず制度そのものを自分で確認しておくと、業者の説明が正しいかどうかも判断しやすくなります。