この助成金の結論

福田(聞き手)
白石さん、今回は「働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)」です。名前が長いのですが、どんな制度ですか。

白石みなと(補助金活用アドバイザー)
はい。勤務間インターバルとは、勤務終了後から次の勤務までに一定の休息時間を設ける仕組みです。公募情報では「働く方の生活時間や睡眠時間を確保し、健康保持や過重労働の防止を図るもの」とされていて、平成31年4月から制度の導入が努力義務化されています。このコースは、その導入や環境整備に取り組む中小企業事業主を支援するものです。まず全体像を表にします。
| 項目 |
内容 |
| 制度名 |
働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース) |
| 実施機関 |
厚生労働省 |
| 補助率 |
4分の3(一定条件で5分の4) |
| 助成上限額 |
導入状況に応じて最大150万円 |
| 対象者 |
中小企業事業主(業種ごとの資本金・労働者数要件あり) |
| 対象業種 |
全業種 |
| 対象地域 |
全国 |
| 受付期間 |
2026年4月13日〜2026年11月30日17時 |

福田
努力義務ということは、まだ導入していない会社の方が多いんでしょうか。

白石みなと
そこは公募情報に記載がなく、確認できませんでした。判明しているのは、未導入の事業場だけでなく、既に導入済みで対象範囲や時間数が一定水準に届いていない事業場も対象に含めている、という制度の作りです。次の章で具体的に見ていきましょう。
対象になる事業者

白石みなと
次の4つすべてに該当する中小企業事業主、とされています。
| # |
要件 |
| ① |
労働者災害補償保険の適用を受ける中小企業事業主であること |
| ② |
36協定を締結しており、原則として過去2年間において月45時間を超える時間外労働の実態があること |
| ③ |
年5日の年次有給休暇の取得に向けて、年休管理簿や就業規則等を整備していること |
| ④ |
未導入の事業場、または導入済みでも対象範囲・時間数が一定水準に届いていない事業場を有すること |

福田
②の「月45時間を超える時間外労働の実態」というのは、必須条件ということですか。

白石みなと
公募情報では「原則として」という留保が付いています。原則の運用がどこまで厳格かは公募情報に明記がありませんので、時間外労働の実態が微妙な場合は窓口へ確認するのが確実です。

福田
④の「一定水準に届いていない事業場」というのを、もう少し具体的に教えてください。

白石みなと
3パターンに分かれています。1つ目は勤務間インターバルを導入していない事業場。2つ目は既に休息時間数が9時間以上のインターバルを導入している事業場で、対象労働者が所属労働者の半数以下のもの。3つ目は既に休息時間数が9時間未満のインターバルを導入している事業場です。いずれかに該当すれば④を満たします。

福田
中小企業事業主かどうかは、どう判定するんですか。

白石みなと
主たる事業ごとに、資本金の額(または出資の総額)か常時使用する労働者の数のいずれかで判定します。卸売業は1億円以下または100人以下、小売業は5,000万円以下または50人以下、サービス業は5,000万円以下または100人以下、病院・診療所・介護老人保健施設・介護医療院は300人以下、その他の事業は3億円以下または300人以下です。いずれかを満たせば中小企業事業主に該当します。
補助対象となる取組(改善事業)

福田
実際に何をすれば助成の対象になるんでしょうか。

白石みなと
「改善事業」として9つの取組が示されていて、このうち1つ以上を選択します。表にします。
| # |
取組 |
| (1) |
労務管理担当者に対する研修 |
| (2) |
労働者に対する研修・周知啓発 |
| (3) |
外部専門家によるコンサルティング |
| (4) |
就業規則・労使協定等の整備 |
| (5) |
人材確保に向けた取組 |
| (6) |
労務管理用ソフトウェア等の導入・更新 |
| (7) |
労務管理用機器の導入・更新 |
| (8) |
デジタル式運行記録計の導入・更新 |
| (9) |
上記に該当しない、労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新 |

福田
(6)のソフトウェアというのは、具体的にどんなものが対象になりますか。

白石みなと
公募情報には具体例が並んでいます。勤怠管理ソフトウェア等の導入・更新、既製品の労務管理用ソフトの自社専用カスタマイズ(自社開発を除く)、労務管理用ソフトと給与システムのAPI連携、RPA等を用いた既存連携の自動化などが挙げられています。「名称の如何にかかわらず、労働時間管理の機能を含むソフトウェア、クラウドサービス又はSaaS等」と定義されているのが特徴です。

白石みなと
あります。乗用自動車等の購入費用、それから事務所の賃借料・光熱費・労働者の賃金・交際費・消耗品費・通信費といった通常の事業活動に伴う費用は対象外です。さらに、電話機・パソコン・タブレット・スマートフォン・PCモニター等の汎用事務機器も対象外と明記されています。

福田
LEDへの交換や、椅子を増やすといった内容はどうですか。

白石みなと
それも対象外です。公募情報では「単なる経費削減を目的とした内容(LED電球への交換等)」「単なる労働者の不快感の軽減や作業快適化を図ることを目的とした内容(スポットクーラー設置、オフィスのエアコンの更新、内装工事等)」が明示的に除外されています。働き方の仕組みを変える取組であることが前提だと考えるとよいと思います。
補助率と上限額

白石みなと
基本は4分の3です。ただし、中小企業事業主が常時使用する労働者数30人以下で、労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新を実施し、かつ改善事業の実施に要した費用の合計額が30万円を超えるときは、5分の4に上がります。1,000円未満の端数は切り捨てです。

白石みなと
はい。交付申請前の勤務間インターバルの導入状況と、導入する休息時間数の組み合わせで決まります。
| 交付申請前の導入状況 |
導入する休息時間数 |
助成上限額 |
| 未導入 |
労働者の2分の1を超える範囲に9時間以上11時間未満 |
100万円 |
| 未導入 |
労働者の2分の1を超える範囲に11時間以上 |
150万円 |
| 上表に満たない場合 |
適用範囲の拡大・時間延長により、4分の1を超える範囲で9時間以上を導入 |
上表の半額からこれに満たない額の範囲(支給要領の別表では50万円又は75万円) |

福田
一番上の150万円が、この制度の最大額ということですね。

白石みなと
そのとおりです。未導入の事業場が、労働者の2分の1を超える範囲に11時間以上のインターバルを新たに導入した場合が、この制度で届く最も高い上限額です。3段目のように、対象範囲や時間数がそれに満たない改善でも、半額程度の上限が別に用意されています。

福田
交付額は、この上限額がそのまま出るということですか。

白石みなと
そうではありません。「助成上限額の範囲で、改善事業の実施に要した費用の合計額に補助率を乗じた額」が交付額です。上限額と、実費×補助率のうち低い方が実際に出る金額だと考えてください。
賃上げ加算・割増賃金率引上げ加算

白石みなと
はい、いずれも任意で追加できます。1つは賃上げ加算で、賃金対象労働者の時間当たり賃金額を引き上げた場合に加算されます。引上げ率は3%以上・5%以上・7%以上の3区分、加算対象人数は30人以下です。常時使用する労働者数の区分ごとに額が変わります。
| 常時使用する労働者数 |
3%以上 |
5%以上 |
7%以上 |
| 30人超 |
1〜3人6万円/4〜6人12万円/7〜10人20万円/11〜30人は1人2万円(上限60万円) |
24万円/48万円/80万円/1人8万円(上限240万円) |
36万円/72万円/120万円/1人12万円(上限360万円) |
| 10人以上30人以下 |
6万円/12万円/20万円/1人2万円(上限120万円) |
48万円/96万円/160万円/1人16万円(上限480万円) |
72万円/144万円/240万円/1人24万円(上限720万円) |
| 10人未満 |
1〜3人6万円/4〜6人12万円/7〜9人20万円 |
60万円/120万円/200万円 |
90万円/180万円/300万円 |

福田
表がかなり細かいですが、要は労働者数が少ないほど、1件あたりの金額が高くなる傾向でしょうか。

白石みなと
そう読める作りです。同じ引上げ率でも、10人未満の区分は労働者数が少ないぶん人数刻みの単価が高めに設定されています。ご自身の常時使用労働者数がどの区分に入るかを、まず確認してください。

白石みなと
割増賃金率引上げ加算です。月60時間以内の時間外労働に係る所定割増賃金率を5%以上引き上げる場合は25万円。月45時間を超えて60時間以内の割増賃金率を5割以上とし、かつ交付申請後から事業実施予定期間の終期までのいずれか1箇月で時間外労働を労働者1人あたり10時間以上削減する場合は75万円。両方を追加すると100万円です。
申請期限とスケジュール

白石みなと
交付申請期限は令和8年4月13日(月)から令和8年11月30日(月)午後5時までです。ただし国の予算額に制約されるため、期限前に受付を締め切る場合があると明記されています。

福田
締切日まで余裕がある、と考えるのは危険そうですね。

白石みなと
そのとおりです。予算に達した時点で締め切られる可能性がある以上、早めの準備をおすすめします。

白石みなと
事業実施期間は、交付決定の日から令和9年1月31日(日)までです。この間に改善事業を実施します。支給申請の期限は、事業実施予定期間が終了した日から起算して30日後の日、または令和9年2月5日(金)のいずれか早い日とされています。
成果目標が未達成だと、その事業場ぶんは出ません

福田
交付決定を受けて、機器を入れて、お金を払えば助成金は出るのでしょうか。

白石みなと
出ません。この助成金には「成果目標」があります。支給要領の書き方はこうです。
選択した成果目標については、全ての指定事業場において、成果目標の達成に向けて上記1の改善事業を行うこととする。成果目標が未達成の指定事業場がある場合は、当該成果目標に関する助成額は支給されない。

福田
事業場が複数あるとき、1か所でも達成できなければ。

白石みなと
その事業場ぶんの助成額が落ちます。ここが、経費を払えば戻ってくる型の補助金と決定的に違うところです。設備を入れることが目的ではなく、勤務間インターバルを実際に導入することが目的だからです。

福田
成果目標というのは、具体的には何を達成すればよいのでしょうか。

白石みなと
新しく勤務間インターバルを導入することです。そのために、次のアを満たしたうえで、イかウのどちらかを満たす必要があります。
|
満たすこと |
| ア(必須) |
対象となる労働者の範囲と、勤務間インターバルの時間数が、いずれも定めを満たすこと。時間数は、各指定事業場に導入するもののうち最も短い時間数で判定されます |
| イ |
就業規則に4つの事項を定めること。加えて常時10人以上の労働者を使用する指定事業場では、事業実施予定期間にその就業規則を所轄労働基準監督署長に届け出て、施行すること |
| ウ |
労働協約に4つの事項を定めること |

白石みなと
事業場ごとに違う時間数を入れた場合、一番短いところが基準になります。9時間と11時間を入れたら、9時間として扱われます。長いほうで判定されると思っていると、助成額の区分が変わります。

福田
就業規則か労働協約に定める4つとは何でしょうか。
| # |
定めること |
| 1 |
対象となる労働者の範囲 |
| 2 |
勤務間インターバルの時間数 |
| 3 |
勤務間インターバルを確保することによって、翌日の始業時刻を超えてしまう場合の取扱い |
| 4 |
勤務間インターバルを確保できない場合 |

白石みなと
抜けます。「休息を11時間取る」とだけ書いて出してしまう例です。インターバルを取ると始業時刻に間に合わないときにどうするのか、取れなかったときにどうするのかまで書いていないと、要件を満たしません。

白石みなと
はい。労働組合と使用者との間の労働条件その他に関する合意を書面にし、両当事者が署名または記名押印したものをいう、と定義されています。組合が無い会社は、就業規則の側で進めることになります。
交付決定の前に契約すると、その分は消えます

福田
交付決定を待たずに動いてよいものはありますか。

白石みなと
契約はだめ、見積は可です。支給要領にこう書かれています。
交付決定の前に改善事業に係る契約行為等を行った場合、当該契約行為等に係る内容を改善事業に含めることはできない。ただし、契約行為等の準備として、例えば物品の売買契約に係る見積りを交付申請前に取得することなどは差し支えない。

白石みなと
取っておいてください。むしろ交付申請には金額の根拠が要ります。
取ってよいのは見積まで、動かしてよいのは交付決定の後、と分けて覚えるのが確実です。この順番の話は
交付決定の前に発注してしまったときの解説にまとめています。
年休管理簿と就業規則は、交付申請の「前」に要ります

白石みなと
2つあります。どちらも交付申請の前です。
1つめ。年次有給休暇管理簿。すべての指定事業場について、年次有給休暇の付与実績にかかわらず、時季・日数・基準日を明らかにした書類を作成していることが要件です。
2つめ。年5日の時季指定に関する就業規則の届出。常時10人以上の労働者を使用する指定事業場については、年次有給休暇の時季指定の対象となる労働者の範囲及び時季指定の方法等の記載がある就業規則を作成し、交付申請の前に、あらかじめ所轄労働基準監督署長に届け出ている必要があります。

福田
パートタイマー用の就業規則を別に作っている会社もあります。

白石みなと
そこが落とし穴です。支給要領に、一部の労働者に適用される個別の就業規則を作成すること自体は差し支えないが、年次有給休暇の時季指定については当該個別の就業規則にも定めた上で、交付申請前に所轄労働基準監督署長に届け出ていなければ、本要件を満たしたことにはならない、と書かれています。

白石みなと
足りません。別規則があるなら、そちらにも書いて、そちらも届け出てください。
対象になる機器・ソフトの線引きは、思ったより細かいです

白石みなと
「労働時間管理の機能を含む」ことが条件です。除かれるものが具体的に挙がっています。
| 除かれるもの |
支給要領の理由 |
| セキュリティソフトウェア等 |
単にパソコンの制御機能、ログ収集機能、資産管理機能又は運用管理機能等を有するのみで、労働時間管理のために活用することを想定されていないため |
| 作業を実質的に外部委託しているクラウド・SaaS |
労働時間の削減が期待される作業を実質的に外部委託していると考えられる場合 |
| 自社開発 |
ソフトウェアのカスタマイズ・開発いずれも「自社開発を除く」と明記 |
| オプションで労務管理機能を追加できる機器 |
労務管理が主たる機能ではないため、機器の区分には該当しない |

福田
運行記録計はどうでしょう。運送業のご相談が多い分野です。

白石みなと
デジタル式運行記録計は、法定3要素が記録できることが必要です。瞬間速度・運行距離・運行時間の3つです。単に出庫・帰庫の時刻を記録するに過ぎないものや、ドライブレコーダーと一体不可分で、主たる機能がドライブレコーダーであるものは、この区分には該当しません。

白石みなと
そうとは限りません。支給要領は「この区分には該当せず、労働能率の増進に資する設備・機器等に該当するか否かを検討する必要がある」という書き方をしています。別の区分で拾える可能性が残るということです。判断に迷ったら、都道府県労働局の窓口で確かめてください。
公式情報・問い合わせ先

白石みなと
公募情報には、企業の所在地を管轄する都道府県労働局 雇用環境・均等部(室)とだけ案内されています。電話番号や受付時間の記載は公募情報にはありませんので、詳細はお近くの労働局へ直接お問い合わせください。

白石みなと
厚生労働省が公開しているこの制度の紹介ページが出典です。

白石みなと
本記事は厚生労働省の公開情報をもとにしています。制度の内容・締切・予算の状況は変更されることがありますので、申請前には必ず最新の資料をご確認ください。
なお、対象になり得るかどうかは事業場ごとの労働時間管理の状況によって個別の判断になりますので、「対象です」と断定はできません。また、本助成金の支給申請書の作成代行・提出代行は社会保険労務士の独占業務です。当方では申請書の作成・提出の代行は行っておりません。制度情報の提供と、必要に応じた社会保険労務士のご紹介までとさせていただきます。
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この制度は全国が対象で、特定の自治体の企業に絞った制度ではありません。そのため、同一自治体の他制度からの案内はできませんでしたが、代わりに同じ厚生労働省が実施する働き方改革関連の助成金を紹介します。

白石みなと
いずれも厚生労働省の助成金ですが、対象になる要件はこの制度とはそれぞれ異なります。対象になり得るかは、各制度のページで個別にご確認ください。併用の可否は各制度の実施機関にご確認ください。
| 制度名 |
実施機関 |
上限額 |
リンク |
| 働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース) |
厚生労働省 |
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| 業務改善助成金 |
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