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人材開発支援助成金(自発的職業能力開発訓練)とは?会社が命じない学びに出る助成

人材開発支援助成金(自発的職業能力開発訓練)とは?会社が命じない学びに出る助成

制度概要

対象地域
全国
主な対象者
就業規則等に自発的職業能力開発経費負担制度を定め、その制度に基づいて雇用保険被保険者の訓練経費を負担する事業主。対象労働者は、労働時間以外に自らの申出で事業外訓練を受講する被保険者

対象となる可能性がある事業者の例です。詳細な要件は本文および公式ページでご確認ください。

補助率
経費助成45%(中小企業・大企業とも同率。賃金要件または資格等手当要件を満たす場合は+15%)。賃金助成は対象外
上限額
300万円(1事業所1年度。人への投資促進コース全体の2,500万円に達していなくてもこの額が限度)
申請期限
データなし

公開日 2026-09-09 / 最終更新日 2026-09-09 / 情報確認日 2026-09-09 / 公式ページを見る

福田(聞き手)
白石さん、人材開発支援助成金のメニューをひととおり見てきましたが、この「自発的職業能力開発訓練」だけ、名前の感じがほかと違いますね。何が違うのでしょうか。
白石みなと(補助金活用アドバイザー)
構造が逆だからです。ほかのメニューは、会社が業務命令で社員に訓練を受けさせ、その費用や訓練中の賃金を助成します。このメニューは、社員が自分の意思で、労働時間の外で受けた訓練の費用を会社が負担したときに、その負担額に助成が付くというものです。会社が「受けろ」と言った訓練は、ここでは対象になりません。対象になる社員は雇用保険の被保険者です。同じ助成金の中に、正反対の建て付けのメニューが同居しているとご理解ください。
福田
社員が勝手に勉強した分を、会社が後から払ってあげれば助成が付く、ということですか。それなら手軽そうですが。
白石みなと
思いつきで払っても対象になりません。先に就業規則等に「自発的職業能力開発経費負担制度」を定めておく必要があります。これは、被保険者が事業外訓練を自発的に受講する際の直接的な経費について、会社がその全部または一部を負担することを就業規則などに規定した制度です。その制度に基づいて負担したものだけが助成の対象になります。すでに制度を定めていて適用実績がある会社も対象になり得ますので、制度が先、支払いが後という順番だけは動かせません。

助成率は中小も大企業も同じ

福田
金額の話を先にうかがいます。いくら出るのでしょうか。中小企業のほうが手厚い、といういつもの形でしょうか。
白石みなと
ここは珍しく同率です。経費助成が45%で、中小企業も大企業も変わりません。人材開発支援助成金は中小企業を手厚くするものが多いので、例外的な形です。賃金要件または資格等手当要件を満たすと、経費助成率は60%に上がります。この2つの要件の考え方は、ほかのメニューと同じです。ただし賃金助成はありません。労働時間の外で受ける訓練が前提ですので、訓練中の賃金という考え方自体が出てきません。
項目 内容
経費助成率 45%(中小企業・大企業とも同率)
賃金要件・資格等手当要件を満たす場合 60%
賃金助成 対象外
1事業所1年度の限度額 300万円
福田
限度額の300万円は、ほかのメニューと合わせた枠でしょうか。それともこのメニュー単独の枠でしょうか。
白石みなと
両方の性格があり、そこが分かりにくいところです。人への投資促進コース全体の限度額は1事業所1年度で2,500万円です。ところがこのメニューは、コース全体が2,500万円に達していなくても300万円で頭打ちになります。つまり、ほかのメニューをまったく使っていなくても、ここだけで300万円を超えて受け取ることはできません。コース全体の枠と、このメニュー固有の枠の、低いほうが効くとお考えください。

1人あたりの上限は、訓練の長さで階段になっている

福田
社員1人あたりの上限もあるのでしょうか。何人に使うかで考え方が変わりそうです。
白石みなと
実訓練時間数で3段階の階段になっています。そのうえで、大学や大学院での訓練、定額制サービスによる訓練には別の枠が用意されています。同じ金額を払っても、訓練の種類と長さで戻る額が変わるということです。たとえば会社が10万円を負担しても、その訓練が100時間未満であれば、1人あたりの限度額は7万円になります。
訓練の種類・長さ 1人あたりの経費助成の限度額
100時間未満 7万円
100時間以上200時間未満 15万円
200時間以上 20万円
大学での訓練 1年あたり60万円
大学院での訓練 1年あたり国内60万円(海外200万円)
定額制サービスによる訓練 受講者1人1月あたり2万円
福田
同じ社員が何度でも使える、というものではないのでしょうか。
白石みなと
1人あたり1年度に3回までです。ここでいう1年度は、支給申請日を基準にした4月1日から翌年3月31日までを指します。注意が要るのは定額制サービスによる訓練の数え方です。このメニューと「定額制訓練」、それに事業展開等リスキリング支援コースの定額制サービスによる訓練を合わせて、1人が1年度に受講できるのは3回までと数えます。メニューをまたいで合算されますので、複数のメニューを併用する予定があるなら、社員ごとの回数を管理しておく必要があります。

会社が「経費の2分の1以上」を出さないと成立しない

福田
制度そのものを作る条件を教えてください。就業規則に一行入れれば足りる、という話ではなさそうですね。
白石みなと
5つの条件があり、そのうち2つが金額と支払い方の話です。ここを外すと、いくら訓練を受けさせても助成にたどり着きません。
制度に必要なこと 内容
対象者 被保険者を対象にすること(被保険者以外を含めてもよい)
負担割合 事業主が自発的職業能力開発経費の2分の1以上を負担すること
支払い方 通貨により直接、被保険者に支払うこと(事業主が直接訓練機関に受講料等を支払う場合を除く)
周知 制度を規定した就業規則または労働協約を、制度施行日までに労働者へ周知すること
受講のしかた 被保険者が自発的職業能力開発として訓練等を受講できること
福田
「2分の1以上」は、会社が半分以上を出さないといけない、という意味ですね。
白石みなと
そうです。社員が5万円払った講座について会社が1万円だけ補助する、という制度では要件を満たしません。半分以上を会社が持つ制度にしたうえで、その負担額の45%が助成される、という二段構えになっています。支払い方にも決まりがあり、原則は本人が教育訓練機関へ直接申し込んで受講料を払い、あとから会社が本人に補助する形です。ただし就業規則等の規定に基づいて会社が直接訓練機関へ払っている場合も、助成対象になります。
福田
就業規則は、届出まで必要でしょうか。作って社内に貼っておけばよい、というものではないのですね。
白石みなと
届出まで必要です。就業規則は、制度施行日までに管轄の労働基準監督署へ届け出たものである必要があります。常時10人未満の労働者を使用する事業主の場合は、制度施行日までに事業主と労働組合等の労働者代表者による申立書を作成することでも構いません。制度施行日とは、その制度を実際に動かし始める日として就業規則に書いた日のことです。この届出が実質の第一関門で、ここが済まないと先へ進めません。
福田
対象にする社員や金額を、会社の側で絞ってもよいのでしょうか。全社員が青天井に申し込んでくると、負担が読めません。
白石みなと
法令の範囲内なら絞れます。対象労働者を限定すること、労働者からの申請に対して会社が審査すること、あらかじめ補助の対象とする訓練を限定すること、経費負担額の上限を設けることも認められています。制度を作る=何でも払う、ではありません。予算の見通しが立つ範囲で設計してよい、ということです。運用できない制度を作ってしまうと、かえって社内の不満のもとになります。

労働時間の中でやると、対象から外れる

福田
「自発的」かどうかは、どこで判断されるのでしょうか。社員が「自分でやりたいと言いました」と書けば済む話ではないですよね。
白石みなと
判断の軸は時間帯です。要領は、使用者の指揮命令下に置かれる労働時間中に実施される訓練等ではなく、労働時間以外において労働者の申出により実施される訓練を自発的職業能力開発と定義しています。そのうえで、労働時間中に訓練が実施されているものと疑われる場合には、受講の経緯等について事業主や労働者に聴取することもあると明記されています。書面だけを見て終わり、という審査ではありません。
福田
ほかのメニューとは、まったく逆の要件ということになりますね。
白石みなと
そのとおりで、ここが実務でいちばん事故になりやすいところです。ほかのメニューは「業務命令で、労働時間に実施すること」を求めています。こちらはその逆です。同じ会社で両方を使う場合、どちらの建て付けで行った訓練なのかを、記録の段階で分けておいてください。出勤簿や受講記録が混ざったまま、あとから振り分けようとすると苦しくなります。制度を作るときに、申込みの様式から分けておくのが安全です。

対象になる訓練の形

福田
訓練の中身に条件はありますか。いま担当している仕事と関係のない勉強でもよいのでしょうか。
白石みなと
職務を問わないのが、このメニューの大きな特徴です。職業に必要となる知識や技能の習得をさせるための訓練であればよく、いま担当している職務に直接関係していなくても構いません。ほかのメニューが「職務に関連した」訓練を求めるのと対照的です。ただしOFF-JTであること、そして事業外訓練であることが要件です。社内で講師を立てて完結する訓練は、ここでは対象になりません。
福田
時間の条件はどうでしょうか。短い講座では駄目、ということはありますか。
白石みなと
実施方法によって分かれます。通学制と同時双方向型の通信訓練は、1コースあたりの実訓練時間数が10時間以上。eラーニングと通信制は、1コースあたりの標準学習時間が10時間以上、または標準学習期間が1か月以上です。ただし一般教育訓練等の指定講座であれば、この時間の要件は求められません。定額制サービスによる訓練も実施でき、その場合は修了した訓練の標準学習時間が合計10時間以上の方が支給対象になります。
実施方法 時間の要件
通学制・同時双方向型の通信訓練 1コースあたりの実訓練時間数が10時間以上
eラーニング・通信制 1コースあたりの標準学習時間が10時間以上、または標準学習期間が1か月以上
一般教育訓練等の指定講座 上記の時間の要件は不要
定額制サービスによる訓練 修了した訓練の標準学習時間が合計10時間以上
福田
資格の受験料や、参考書の代金を補助する制度にするのはどうでしょうか。社員には喜ばれそうですが。
白石みなと
そこは外れます。この制度は、資格・試験に関する受験料を補助する制度でも、労働者の独学のための書籍購入費を補助する制度でもない、と明記されています。受験料と書籍の購入費は対象になりません。ただし訓練の受講にあたって必要な教科書代・教材代は除かれていますので、講座に付随する教材は対象になり得ます。社内制度としては受験料も補助してよいのですが、その部分は助成の計算に乗らないとご理解ください。
福田
社員が途中でやめてしまった場合はどうなりますか。自発的な学びだと、現実に起こりそうです。
白石みなと
8割が線です。本人の都合等で訓練期間の途中でやめた場合、実訓練時間数の8割以上を受講していなければ助成対象になりません。さらにeラーニングまたは通信制による訓練は、受講時間数にかかわらず、修了していなければ対象になりません。時間数で救われる余地がない、ということです。途中で止まる可能性は現実にありますので、制度を作る段階で、修了までが前提であることを社内に周知しておくとよいと思います。

休暇の制度と組み合わせられる

福田
学ぶ時間そのものを会社が用意する、という話にはならないのでしょうか。費用だけ出ても、平日の夜と週末では限界があります。
白石みなと
なります。しかも併給できます。自発的職業能力開発経費負担制度を使って訓練を受ける社員に、会社が有給の教育訓練休暇を与える場合は、同じコース内の長期教育訓練休暇制度を活用できることがあります。こちらは訓練経費への助成、あちらは賃金への助成ですので、性格が重なりません。両方を受けることが可能です。長期教育訓練休暇制度を新たに導入する場合は、さらに制度導入助成を受けられる場合があります。
福田
最後に、これから検討する会社へ一言お願いします。
白石みなと
まず就業規則です。金額の話より先に、経費負担制度を作って労働基準監督署へ届け出るところが動き出しの一歩になります。そのうえで、会社が半分以上を持つ設計に無理がないかを確かめてください。手続きの窓口は、事業所の所在地を管轄する都道府県労働局・ハローワークです。なお当社は申請書類の作成・提出の代行は行いませんので、就業規則の作成や届出については社会保険労務士にご相談ください。

あなたの会社に合う補助金を探してみませんか

白石みなと
同じ人材開発支援助成金の中から、あわせて見ておきたいメニューを挙げます。要件はメニューごとに異なります。1事業所1年度の限度額は人への投資促進コース全体で合算されます。併用の可否も含め、管轄の労働局にご確認ください。
制度名 実施機関 上限額 リンク
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