AI研修・生成AI研修に助成金は使えるのか?対象になる訓練の条件
公開日 2026-09-04 / 最終更新日 2026-09-26

監修:福田友亮(DXコンサルティングジャパン 代表取締役)
結論から
- 「生成AI研修専用」の国の助成金はありません。既存の人材育成の助成金(人材開発支援助成金)の中で、訓練の中身と形が条件に合うかどうかで判断されます。
- 候補になりやすいのは事業展開等リスキリング支援コースと人材育成支援コースの2つです。経費の助成率は2つのコースで同じではなく、人材育成支援コースの中でもメニューによって違います。率と上限額は、事業展開等リスキリング支援コースと人材育成支援コースの記事に、確認した時点の値として載せています。
- 事業展開等リスキリング支援コースは、令和8年8月3日の改正で、汎用的なプロンプトの作り方のような、職務に間接的に必要な内容の研修が対象外の例に挙げられました(経過措置があります)。研修の中身が職務に直結しているかを、申し込みの前に確かめてください。
- 有力な2コース(人への投資促進コース・事業展開等リスキリング支援コースの系統)は令和8年度(2026年度)が最終年度です。検討はできるだけ早く始めてください。
対象になるかどうかは、学ぶ内容で見られます。要領は「職務に関連した専門的な知識及び技能の習得をさせるための訓練等であること」を支給要件の一つに定め、対象にならない実施目的を表で列挙しています。あわせて、訓練としての形(時間の記録、出席や修了の確認)も見られます。中身と形の両方です。
さらに、多くの制度では訓練を始める前に届出が要ります。「良い研修が見つかったので先に受けさせた。あとから申請しよう」は通らないことが多いため、検討はできるだけ早い段階で始めてください。
★一方、人材育成支援コースと教育訓練休暇等付与コースには、このような期限の記載は見当たりません。「令和8年度が最終年度」は制度全体の話ではなく、上記のコースに限った話です。どのコースを検討しているかによって、急ぐ理由の有無が変わります。
1. 「AI研修だから使える制度」があるわけではない
そのため、制度を探すときも「AI 助成金」のようなキーワードよりも、人材育成・研修に使える制度のように、訓練・研修を目的にした制度から探すほうが見つけやすくなります。学ぶ内容がAIかどうかは、対象を最初に絞り込む基準にはなりにくいということです。
2. 「何を学ぶか」と「どういう訓練の形か」の両方で対象が決まる
中身とあわせて、訓練としての形も見られます。訓練時間の記録、受講者の出席や修了の確認といった、あとから確認できる材料が残るかどうかです。
つまり、次のような組み合わせが起こり得ます。
- 生成AIを扱う内容でも、訓練として届出・記録の要件を満たしていれば対象になり得る
- 逆に、内容がどれだけ実務的でも、訓練としての形が整っていなければ対象になりにくい
「生成AIの研修だから対象」「一般的な研修だから対象外」という単純な線引きではなく、中身と形式の両方を見て判断される、と理解しておくのが安全です。
なお、人材開発支援助成金の事業展開等リスキリング支援コースについては、令和8年8月3日の改正で、DX化・GX化に関する訓練のうち助成の対象外になる目的が具体例つきで示されました。このコースを使うつもりなら、研修の中身がその線引きに当たらないかを、申し込みより前に確かめてください。原文と具体例は生成AI研修が助成の対象外になる線引きで扱っています。
★これは事業展開等リスキリング支援コースについての改正です。人材育成支援コースなど他のコースや他の制度に、同じ線引きがそのまま当てはまるわけではありません。他のコースや他の制度を使うときは、それぞれの要領でご確認ください。
3. eラーニング・定額制(サブスク型)の研修は、制度ごとに扱いが違う
eラーニングについては、学習時間をきちんと記録・管理できる仕組みがあるかどうかを条件にしている制度があります。一方、定額制(サブスク型)のサービスは、助成の対象になるかどうかの扱いが制度によって分かれます。
「うちの会社が使っている研修サービスは対象になるか」を確かめたいときは、利用しているサービスの形式(教材の種類・記録の残り方・提供のされ方)を、狙っている制度の要件と照らし合わせる必要があります。ここは一般論だけで判断できない部分です。
4. ★訓練を始める前に届出が要るものが多い
これは生成AI研修に限った話ではありませんが、見落とされやすい点です。「まず研修を受けさせて、良かったので申請する」という順番では、届出のタイミングを満たせず対象外になることがあります。
社員に研修を受けさせようと決めたら、申し込みや受講開始の前に、使えそうな制度の届出条件を確認するのが安全な進め方です。締切だけでなく、「着手までに何を出しておく必要があるか」も合わせて確認してください。
5. 見られるのは受講料だけではない
社員が業務時間中に研修を受ける場合、その時間の人件費も会社にとってはコストです。受講料だけで損得を考えるのではなく、訓練中の賃金まで対象になる制度かどうかも、比較のポイントになります。
6. 社内の勉強会は、社内でやること自体が理由で外れるわけではない
つまずきやすいのは、社内かどうかではなく、次のような明文の要件のほうです。
- 講師の要件:事業内訓練では、講師を務める人に資格や実務経験の要件があります
- 実施の方法:事業内訓練は通学制と同時双方向型に限られ、eラーニングや通信制は対象になりません
- 実施目的:日常の業務の延長として行われるものは、実施目的の面で対象から外れます
社内の取り組みを助成金につなげたいのであれば、外部に切り替えることよりも、誰のどの業務のための訓練かをはっきりさせ、講師の要件と記録の残し方を先に整えるほうが近道になります。
なお、本人が独学で学んだ場合は、これらの枠組みとは別の話になります。
7. 自社の研修で確かめる順番
研修に使える国の制度は人材開発支援助成金とは|人材育成・研修に使える助成金10選にまとめてあり、訓練費用に出るものと、制度づくりに出るもので半分に分かれます。ここでは、訓練費用に出るもののうち、生成AI研修でよく候補になる2つのコースの分かれ目を書きます。
最初の分かれ目:その訓練は何のために行うのか
| 入口 | 対象になる訓練 |
|---|---|
| ① 事業展開 | 事業展開を行うにあたり、新たな分野で必要となる専門的な知識・技能を習得させる訓練 |
| ② DX化・GX化 | 企業内のDX化やグリーン・カーボンニュートラル化を進める場合に、これに関連する業務に従事させる上で必要となる訓練 |
| ③ 人事・人材育成計画 | 企業内の人事・人材育成に関する計画に基づき、今後従事することが予定される職務に必要となる訓練 |
いずれかに当てはまりそうなら、事業展開等リスキリング支援コースが候補になり得ます。詳しくは事業展開等リスキリング支援コースの記事にあります。
どれにも当てはまらず、いまの職務に関連した知識・技能を習得させる訓練であれば、人材育成支援コースの「人材育成訓練」が候補になり得ます(こちらも10時間以上のOFF-JTです)。詳しくは人材育成支援コースの記事にあります。
コースが決まってから確かめること
| # | 確かめること | どのコースの話か | 答えが書いてある場所 |
|---|---|---|---|
| 1 | 訓練の時間 | 両方(どちらも実訓練時間数に下限があります) | 人材育成支援コース/事業展開等リスキリング支援コース |
| 2 | 実施の形 | 両方(ただし扱いはコースごとに違います) | 同上/定額制サービスを使う場合は定額制訓練と自己負担額の試算 |
| 3 | 訓練の中身 | ★事業展開等リスキリング支援コースだけ。令和8年8月3日の改正で示された線引きに当たらないかを見ます | 生成AI研修が助成の対象外になる線引き |
| 4 | 出す時期 | 両方。計画届の提出期間は訓練開始日から逆算します | 訓練計画届/提出期間カリキュレータ |
★金額を出す前に、自社について確かめること
| 確かめること | なぜ決まっていないと金額が出ないか | どこで確かめるか |
|---|---|---|
| 実訓練時間の数え方 | 社内で数えた「12時間」が、そのまま制度上の実訓練時間数になるとは限りません。休憩や自習の扱いは要領で定められています | 候補のコースの公募要領/労働局 |
| 中小企業に当たるか | 助成率と助成額は中小企業か大企業かで変わります。判定は業種ごとの資本金・従業員数で行います | 候補のコースの公募要領/労働局 |
| 受講料のどこまでが対象経費か | 外部に委託する訓練では、入学料・受講料・教科書代等のうち、あらかじめ受講案内等で定めているものが対象経費とされています。払った総額がそのまま対象になるとは限りません | 人材育成支援コースの対象経費 |
| 訓練開始日 | 計画届の提出期間は開始日から逆算します。「10月から」では期限が決まりません | 提出期間カリキュレータ |
| 実施の形(ライブ配信か、録画教材か) | ★「オンライン研修」だけでは決まりません。同時双方向で行うものと、録画教材を各自が見るeラーニングとでは、賃金助成の扱いが変わり得ます | 候補のコースの公募要領/労働局への確認 |
★この5つが決まるまでは、金額は「もし〜なら」という条件付きの試算にしかなりません。条件を書かずに金額だけを持ち歩くと、あとで前提が1つ崩れたときに、見込みが丸ごと外れます。
★そして、「オンライン研修だからeラーニング」とは限りません。決まった時間に講師と同時双方向で行うものと、録画教材を各自が好きな時間に見るものとでは、扱いが変わり得ます。自社が申し込もうとしているのがどちらなのかを、先に提供元へ確かめてください。
★そのうえで、1つ上の5項目が決まっていない段階で出した金額は、条件付きの試算です。社内で共有するときは、どのコースの、どの前提での数字なのかを必ず一緒に書いてください。前提を書かずに金額だけが残ると、そこが崩れたときに誰も気づけません。
8. コースごとの助成率・助成額とワークの早見表
| コース | 助成の形 | 上限の考え方 | 一次資料 |
|---|---|---|---|
| 事業展開等リスキリング支援コース | 経費助成+賃金助成(設備投資加算あり) | 1事業所1年度で独立した上限 | 案内PDF |
| 人への投資促進コース/高度デジタル人材訓練・成長分野等人材訓練 | 経費助成+賃金助成 | 人への投資促進コース全体で合算 | 案内PDF |
| 人への投資促進コース/定額制訓練 | 経費助成のみ(賃金助成は対象外) | 人への投資促進コース全体で合算 | 案内PDF |
| 人への投資促進コース/自発的職業能力開発訓練 | 経費助成のみ(賃金助成は対象外) | 人への投資促進コース全体の内数 | 厚労省の制度案内 |
| 人への投資促進コース/情報技術分野認定実習併用職業訓練 | 経費助成+賃金助成+OJT実施助成 | 人への投資促進コース全体で合算 | 案内PDF |
| 人への投資促進コース/長期教育訓練休暇等制度 | 賃金助成(長期教育訓練休暇制度のみ)+制度導入助成 | 人への投資促進コース全体で合算 | 厚労省の制度案内 |
| 人材育成支援コース | 経費助成(メニューにより率が変動) | コース単独の上限 | 案内PDF |
| 教育訓練休暇等付与コース | 定額(率ではない)。1事業主1回限り | コース単独の上限 | 案内PDF |
★この表に具体的な率・上限額はあえて書いていません。制度は改正され、記載した数字だけが古くなる恐れがあるためです。正確な率・上限額は、それぞれのコースの記事に、確認した時点の値として載せています(リンク先を参照してください)。
金額の出し方(考え方だけ)
自社の数字を出したいときは、①候補のコースを1つに絞る → ②そのコースの記事で率・単価・上限を確認する → ③上で見た5項目(実訓練時間の数え方・中小企業の判定・対象経費の範囲・訓練開始日・実施の形)を自社の実態に当てはめる、という順番で計算してください。順番を飛ばして先に金額だけを知ろうとすると、使えないコースの数字を見てしまいます。
9. 九州の自治体独自の制度について
九州の自治体独自の補助金の多くは、DX全般や設備投資を対象にしたもので、研修・人材育成に絞ったAI特化の制度はまだ少ないというのが実態です。今後、各県・市の制度は増減しますので、福岡県・熊本県・佐賀県・長崎県・鹿児島県の各ページで、新しく追加された制度がないか確認することをおすすめします。
いま現実的に使える選択肢は、国の人材開発支援助成金が中心というのが、2026年9月時点での実態です。
よくある質問
Q. 生成AIツールの利用料や、システムの導入費用も対象になりますか。 それは研修ではなく、ツール・システムの導入の話になります。研修の助成金とは別の枠組みで探すほうが近道です。AI・デジタル化に使える制度から確認してみてください。
Q. eラーニングだけで完結する研修は、一律で対象外ですか。 一律には決まりません。学習時間の記録が残る仕組みかどうかなど、制度ごとの条件によって扱いが変わります。狙っている制度の募集要領で、eラーニングの扱いがどう書かれているかを確認する必要があります。
Q. 社会保険労務士に相談すれば、申請まで任せられますか。 助成金の申請書の作成・提出の代行は、社会保険労務士の独占業務です。当サイトは制度の情報をお伝えするところまでで、代行は行いません。手続きそのものを相談したい場合は、社会保険労務士や、各県の労働局・ハローワークの窓口が入口になります。
Q. 生成AI研修が対象になる条件を、一言でまとめると? 一言ではまとめられません。「学ぶ内容」と「訓練としての形」の両方が条件です。事業展開やDX化・GX化、人材育成計画のいずれかに関わる内容であること、そのうえで訓練時間の記録・出席や修了の確認が残る形で実施することの、両方を満たす必要があります。詳しくは上の「2.」をご覧ください。
Q. 申請の大まかな流れを教えてください。 多くのコースで共通する流れは、①コースを決める → ②訓練を始める前に計画届を提出する → ③訓練を実施する → ④支給申請する、の順です。②の計画届は、訓練開始日から逆算した期限があります。詳しい期限の計算は訓練計画届とは?いつまでに出すかと提出期間カリキュレータで確認できます。
Q. AIエージェントの使い方を学ぶ研修も対象になりますか。 「AIエージェント」という名称そのものでは判定されません。上の「2.」で見た学ぶ内容と訓練の形の条件に当てはまるかどうかで見られます。事業展開等リスキリング支援コースを使う場合は、令和8年8月3日の改正の線引き(生成AI研修が助成の対象外になる線引き)にも当たらないかを確認してください。
Q. 個人事業主でも使えますか。 人材開発支援助成金は雇用保険の適用事業所であることが出発点の要件です。従業員を雇用し、雇用保険に加入させている個人事業主であれば対象になり得ますが、従業員がいない・雇用保険の適用事業所でない場合は対象外です。自社が適用事業所かどうかは、事業所の所在地を管轄する労働局で確認できます。
Q. 大企業でも使えますか。 使えるコースはありますが、助成率は中小企業より低くなります(上の早見表を参照)。また事業展開等リスキリング支援コースの設備投資加算のように、中小企業だけが対象のメニューもあります。自社が中小企業に当たるかどうかは、業種ごとの資本金・従業員数の基準で判定してください。
Q. コンサルティング会社に依頼して行う研修も対象になりますか。 研修そのものを外部の教育訓練機関に委託する形(事業外訓練)であれば、通常の要件で対象になり得ます。一方、コンサルティング業務の一環として行われる個別相談や、汎用的な助言は、研修・訓練とは別の扱いになることがあります。補助金でコンサルティング費用が対象になるかどうかの一般的な考え方は、補助金でコンサル費用は対象になる?で扱っています。
Q. 今年度中に間に合わなさそうなのですが、来年度以降も同じ条件で使えますか。 分かりません。上で見たとおり、有力な2コース(事業展開等リスキリング支援コース・人への投資促進コース系)は令和8年度が最終年度で、延長されるかどうかは公表されていません。人材育成支援コース・教育訓練休暇等付与コースには期限の記載がありませんが、制度は改正されることがあるため、検討中の年度の最新情報を必ず確認してください。
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生成AI研修に使えそうな制度を具体的に探すなら、目的から見るのが近道です。
制度ごとの対象経費・訓練形式の条件・締切は、それぞれの制度のページに記載しています。この記事に具体的な金額や日付を書いていないのは、制度ごとに違い、年度で変わるためです。申請の前には必ず、公募元が出している最新の募集要領をご確認ください。