この助成金の結論

福田(聞き手)
白石さん、今日は「両立支援等助成金(出生時両立支援コース)」について教えてください。「子育てパパ支援助成金」という呼び方も聞きます。

白石みなと(補助金活用アドバイザー)
はい。支給要領によると、この助成金は男性労働者が育児休業を取得しやすい雇用環境整備や業務体制整備を行い、男性労働者にその養育する子の出生後8週間以内に開始する育児休業を利用させ、男性の育児休業取得率を上昇させる等した特定事業主又は中小企業事業主に対して助成金を支給することを目的としています。ポイントは、助成のパターンが2つに分かれていることです。まず全体像を表にします。
| 項目 |
内容 |
| 制度名 |
両立支援等助成金(出生時両立支援コース〈子育てパパ支援助成金〉) |
| 実施機関 |
厚生労働省 |
| 支給パターン |
[1]男性労働者の育児休業取得/[2]男性労働者の育児休業取得率の上昇等 |
| 対象事業主 |
[1]中小企業事業主/[2]特定事業主 |
| 対象業種 |
全業種 |
| 対象地域 |
全国 |
| 上限額 |
最大77万円(内訳は「支給額の内訳」の章を参照) |

福田
2つのパターンというのは、それぞれ何をすれば対象になるんですか。

白石みなと
支給要領0102にこう書かれています。[1]男性労働者の育児休業取得は、雇用環境整備の措置を複数実施するとともに、育休取得者の業務を代替する労働者の業務見直しなどが含まれた規定に基づく業務体制整備を行い、産後8週間以内に開始する連続5日以上の育児休業を取得させた場合。[2]男性労働者の育児休業取得率の上昇等は、男性労働者の育児休業取得率を前事業年度から30ポイント以上上昇させ、かつ50%を達成した場合等です。どちらも「男性の育休を進める」という目的は同じですが、見ている対象が個人か会社全体かで違います。

白石みなと
[1]は「特定の社員が育休を取った」という個別の事実を評価します。中小企業のように、1人の育休取得が経営上も大きな出来事になる会社に向いています。[2]は「会社全体の育休取得率」という集計の結果を評価します。従業員数が多く、個別の1人より全体の割合の変化のほうが意味を持つ会社向けの仕組み、と読めます。なお、助成金は事業主単位で支給され、事業所単位では支給されません。法人または個人が複数の事業所を営んでいても、その法人・個人をまとめて1事業主として扱います。
対象になる事業者

福田
まず、うちが[1]と[2]のどちらの対象になるかを知りたいです。

白石みなと
対象になる事業主の範囲が、[1]と[2]でまったく違います。ここを最初に確認してください。
| パターン |
対象になる事業主 |
| [1]男性労働者の育児休業取得 |
中小企業事業主 |
| [2]男性労働者の育児休業取得率の上昇等 |
特定事業主 |

福田
特定事業主というのは、中小企業事業主とは違う枠なんですか。

白石みなと
違います。特定事業主のほうが範囲が広い枠です。支給要領0208にこう定義されています。資本金の額または出資の総額が一定額を超えない事業主、または常時雇用する労働者の数が300人を超えない事業主のどちらかを満たせば該当します。業種ごとの基準額を表にします。
| 業種 |
資本金または出資の総額の基準 |
常時雇用労働者数の基準 |
| 小売業(飲食店を含む) |
5,000万円以下 |
300人以下 |
| サービス業 |
5,000万円以下 |
300人以下 |
| 卸売業 |
1億円以下 |
300人以下 |
| その他の業種 |
3億円以下 |
300人以下 |
いずれか一方を満たせば特定事業主に該当します。判定は、支給申請日の属する月の初日における資本金等の額、または企業全体で常時雇用する労働者の数で行います。

白石みなと
そこは正直にお伝えします。中小企業事業主の判定は「共通要領0502」という、両立支援等助成金全体に共通する別の章を参照する形になっていて、
今回読んだ3つの資料(このコースの支給要領・コースQ&A・共通事項Q&A)の範囲には、その具体的な資本金・従業員数の基準は含まれていませんでした。同じ両立支援等助成金の他コースを比較した
両立支援等助成金の6コースを比較するに、業種別の基準表がありますので、そちらでご確認ください。

福田
2つのパターンを同時に狙う、というのはできますか。

白石みなと
できません。それぞれに除外規定があります。支給要領を確認すると、[1]の対象事業主からは「[2]の申請を行った(申請の手続き中も含む)中小企業事業主」が除かれます。申請が通ったかどうかではなく、申請した時点で除外です。逆に[2]の対象事業主も、「[1]の支給申請日が属する事業年度中の申請は不可」とされています。同一年度内での重複はできない作りです。

福田
年度をまたげば両方使える、ということでしょうか。

白石みなと
そこは公募情報の抽出時点の確認で、「[2]の受給後に[1]の申請を行うことはできない」という情報もあります。つまり、[2]を受け取ったあとに[1]へ切り替えることは想定されていません。年度をまたいだ場合の細かい扱いまでは、今回読んだ資料だけでは確認しきれませんでしたので、両方を検討する場合は労働局に事前にご確認ください。
[1]男性労働者の育児休業取得の支給要件

白石みなと
主な要件は6つです。DBに登録されている整理と、支給要領0301・0301aの内容は一致しています。
| # |
要件 |
| ① |
育児・介護休業法等に定める雇用環境整備の措置について、必要な数の措置を実施していること |
| ② |
育児休業取得者の業務を代替する労働者の業務見直しに係る規定等を策定し、当該規定に基づき業務体制の整備をしていること |
| ③ |
男性労働者が、子の出生後8週間以内に開始する育児休業を取得すること |
| ④ |
育児休業制度などを労働協約または就業規則に定めていること |
| ⑤ |
次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を策定し、労働局へ届けていること |
| ⑥ |
対象の男性労働者を育児休業の開始日から支給申請日までの間、雇用保険被保険者として継続して雇用していること |

福田
①の「必要な数の措置」というのは、何人目かによって変わるんですか。

白石みなと
変わります。雇用環境整備の措置は5つ用意されていて(研修実施・相談体制整備・事例収集提供・制度周知・業務配分や人員配置の措置)、このうち何個実施しているかが、育休取得者が1人目か2人目か3人目かで変わります。
| 対象者 |
通常の事業主 |
出生時育休の申出期限を2週間超に設定している事業主 |
| 1人目 |
2つ以上 |
3つ以上 |
| 2人目 |
3つ以上 |
4つ以上 |
| 3人目 |
4つ以上 |
5つ以上 |

福田
「申出期限を2週間超に設定」というのは、どういう会社が該当するんですか。

白石みなと
育児・介護休業法9条の3第4項の規定に基づいて、出生時育児休業の申出期限を、開始予定日の2週間前より前倒しして設定している事業主です。労働者にとっては申出の締切が早まる分、会社側は雇用環境整備をより手厚く行うことが求められる、という対応関係になっています。

白石みなと
はい。しかも「何日取ったか」だけでなく「そのうち何日が所定労働日か」まで見られます。
| 対象者 |
育休日数 |
うち所定労働日 |
| 1人目 |
連続5日以上 |
4日以上 |
| 2人目 |
連続10日以上 |
8日以上 |
| 3人目 |
連続14日以上 |
11日以上 |

福田
所定労働日というのは、土日や祝日を除いた実働日数、ということですか。

白石みなと
そういう理解で近いです。土日祝日を挟んだ5連休を取っても、そのうち会社の出勤日にあたる日が4日に届いていなければ、要件を満たしません。カレンダー上の日数だけで数えると、ずれることがあります。また、支給要領0202には育児休業中に労働者が就業した場合、その日は育児休業日数にカウントしないという注記もあります。連続日数を数えるときは、この点も踏まえてください。
「規定の策定」と「実際の引き継ぎ」で、締切が違います

福田
①②④の順番について、特に注意が要ると聞きました。

白石みなと
ここがこのコースでいちばん間違えやすい点です。支給要領には、こう明記されています。
①、④及び②のうち規定等の策定は、③の育児休業の開始日の前日までに行っている必要があります。

福田
つまり、雇用環境整備の措置(①)と、育休制度を就業規則に定めること(④)、業務見直しの規定を作ること(②の一部)は、社員が育休に入る前日までに終えていないといけない。

白石みなと
そのとおりです。育休が始まってから慌てて規定を整えても、間に合いません。ただし②には続きがあって、「規定等の策定」と「規定に基づく実際の業務体制の整備」は別扱いです。支給要領0301aロにこうあります。
当該規定等に基づく業務体制の整備は、対象労働者の育児休業の開始日の前日までに行うことが望ましいが、遅くとも対象労働者の育児休業の終了日までには行っていること。

福田
規定を書面で作るのは育休の前日まで、でも実際の引き継ぎ作業そのものは、育休が終わるまでに済んでいればいい。

白石みなと
2段階に分かれている、ということです。「ルールを先に決めておくこと」と「そのルールどおりに引き継ぎを実行すること」を混同しないでください。規定の策定が遅れると、そもそも①④②の要件自体を満たせません。
[2]男性労働者の育児休業取得率の上昇等の支給要件

福田
次に[2]の要件です。ここはDB登録の時点では詳細が確認できていなかった部分ですね。

白石みなと
はい、支給要領0300b・0301bを確認したところ、要件は大きく3つでした。
| # |
要件 |
| ① |
雇用環境整備の措置を2つ以上実施していること(出生時育休の申出期限を2週間超に設定している事業主は3つ以上) |
| ② |
育児休業取得者の業務代替者の業務見直しに取り組む旨を定めた規定等を策定し、業務体制を整備していること |
| ③ |
男性労働者の育児休業取得率について、下記(イ)または(ロ)のいずれかを満たすこと |
①②の措置・規定は、③の要件を満たした事業年度に育児休業を取得したいずれかの男性労働者の雇用契約期間中に整備しており、かつその男性労働者の育児休業開始日の前日までに行っている必要がある、という点は[1]と同じ考え方です。加えて、④育休制度を労働協約・就業規則に定めていること、⑤一般事業主行動計画の策定・届出、⑥雇用保険被保険者としての継続雇用は、[1]と共通の要件(支給要領0301)としてこちらにも適用されます。

福田
③の育休取得率のところを詳しく教えてください。
(イ)通常のパターン:育児休業取得率が、前事業年度と比較して30ポイント以上上昇し、50%以上となっていること。支給要領には「例:前事業年度において40%だった場合、70%以上になること」という例示があります。
(ロ)少人数向けの特例:支給申請日の属する事業年度の前々事業年度において、配偶者が出産した男性労働者数が5人未満である場合に、支給申請日が属する事業年度の直前2事業年度における男性の育児休業取得率が、いずれも70%以上であること。

白石みなと
社員数が少なく、その年に配偶者が出産した男性社員の数自体が少ない会社向けだと考えられます。分母が5人未満だと、1人取得するかどうかで取得率が20ポイント・25ポイントと大きく動いてしまい、「30ポイント上昇」という基準になじみません。そこで、急上昇を求める代わりに、直近2年間ずっと70%以上を維持していることを条件にする、別ルートが用意されています。

福田
育休取得率そのものの計算方法も確認したいです。
ある事業年度において育児休業を取得した男性労働者数 ÷ ある事業年度において配偶者が出産した男性労働者数 = 男性労働者の育児休業取得率(小数第1位以下切り捨て、いずれも雇用保険の被保険者に限る)
育児休業以外の休暇(育児目的休暇を含む)だけを取得した労働者は、この取得率の計算における「取得した男性労働者数」には含まれません。育休そのものを取っていることが前提です。

白石みなと
1年目は使えません。コースQ&A(Q出5)に明記されています。育休取得率は事業年度どうしを比較する仕組みのため、新設1年目の事業主は取得率が50%以上であっても支給対象にならず、2事業年度目の取得率が出て初めて対象になりうる、とされています。
支給額の内訳

福田
それぞれ、実際にいくらになるのか教えてください。

白石みなと
まず[1]からです。1人目・2人目・3人目で、それぞれ別枠の定額です。
| 対象者 |
支給額 |
| 1人目(雇用環境整備の措置が基準どおり) |
20万円 |
| 1人目(雇用環境整備の措置を4つ以上実施) |
30万円 |
| 2人目 |
10万円 |
| 3人目 |
10万円 |

福田
1人目の20万円と30万円は、両方もらえるんですか。

白石みなと
いいえ、どちらか1回限りです。1人目の措置を基準(2つ以上)だけ満たせば20万円、4つ以上に増やせば30万円に上がります。2人目の10万円、3人目の10万円は、それぞれ別に「1事業主につき1回限り」です。1人目から3人目まですべて受給した場合、最大で30万円+10万円+10万円=50万円です。
| 内容 |
支給額 |
| 育児休業取得率の上昇等(基本額) |
60万円 |
| +プラチナくるみん認定事業主加算 |
15万円 |
| 合計(プラチナくるみん認定事業主) |
60万円+15万円=75万円 |

白石みなと
次世代育成支援対策推進法に基づく認定制度のうち、上位の認定です。0102②の申請日までに、この認定を受けている事業主は15万円が加算されます。[1]の側にはこの加算の規定はなく、[2]だけの仕組みです。

白石みなと
はい、[1][2]どちらにも上乗せできる共通の加算です。
| 内容 |
支給額 |
| 育児休業等に関する情報公表加算 |
2万円([1]の1〜3人目のいずれか、または[2]、いずれか1回限り) |
自社の育児休業等の利用状況について、「両立支援のひろば」の「一般事業主行動計画公表サイト」で、雇用する男性労働者の育休等取得割合・女性労働者の育休取得割合・育休の平均取得日数の3項目を公表した場合に、2万円が加算されます。

福田
この上限額の合計77万円というのは、どの組み合わせのことですか。

白石みなと
[2]をプラチナくるみん認定事業主として受給し、情報公表加算も合わせて満たした場合です。
|
一般の事業主 |
プラチナくるみん認定事業主 |
| [2]育児休業取得率の上昇等 |
60万円 |
75万円 |
| + 情報公表加算 |
2万円 |
2万円 |
| 合計 |
62万円 |
77万円 |
[1]を1〜3人目までフルに受給しても最大52万円(50万円+情報公表加算2万円)で、[2]の77万円を下回ります。このコースの最大額は、[2]のプラチナくるみん認定+情報公表加算のケースだと考えてください。
申請の時期・申請先

白石みなと
パターンごとに起算点が違います。支給要領0401にまとまっています。
| パターン |
申請期限 |
| [1]男性労働者の育児休業取得 |
対象となる育児休業の終了日の翌日から起算して2か月以内 |
| [2]男性労働者の育児休業取得率の上昇等 |
要件を満たす事業年度の翌事業年度の開始日から起算して6か月以内 |
| 情報公表加算 |
[1]または[2]の申請に同時に申請すること |

福田
情報公表加算だけを単独で申請することはできないんですね。

白石みなと
できません。必ず[1]か[2]と同時に申請する形です。

白石みなと
支給要領0401には、人事労務管理の機能を有する部署が属する事業所(「本社等」)の所在地を管轄する労働局長に提出する、とあります。支給対象労働者が生じた事業所とは関係なく、本社等がまとめて申請する扱いです。局内の具体的な窓口名(部署名)までは、今回読んだ資料には記載が確認できませんでしたので、その点は管轄の労働局に直接お尋ねください。
Q&Aから見つけた実務上の落とし穴

福田
事務局が実際に受けた質問から、注意点を教えてください。

白石みなと
2つ紹介します。まず1つ目、育休を分割して取った場合の申請期限です。コースQ&A(Q出8)にこうあります。
出生時育児休業や通常の育児休業を複数回に分割して取得している場合は、分割した休業のうちの1つが終了した時点で、その翌日から当該休業についての申請期間が開始し、同日から起算して2か月以内が支給申請期間となる。

白石みなと
間に合わない可能性があります。「育休が全部終わってから2か月以内」ではなく、分割した休業の1つが終わるたびに、その回の申請期限のカウントが始まるという作りです。複数回に分けて育休を取らせる予定がある場合は、最初の1回が終わった時点でカレンダーに申請期限を書き込んでください。

白石みなと
情報公表加算の「公表する場所」です。共通事項Q&A(Q共19)にこうあります。
厚生労働省が運営する、仕事と家庭の両立支援についての取組を紹介するウェブサイトである「両立支援のひろば」の「一般事業主行動計画公表サイト」において公表を行うことが必要である。自社サイトでの公表など、それ以外の場で公表した場合は、加算の対象とはならない。

福田
自社のホームページに育休取得率を載せていても、それだけでは加算されない。

白石みなと
されません。「両立支援のひろば」という指定サイトへの掲載が条件です。すでに自社サイトで公表している会社でも、このサイトへの掲載申請を別途行う必要があります。なお、直前の事業年度が終わって間もなく集計が間に合わない場合は、2事業年度前の情報を公表することで差し支えない、という救済も共通事項Q&A(Q共20)に示されています。
公式情報・問い合わせ先

白石みなと
厚生労働省が公開している2026(令和8)年度版の「両立支援等助成金 支給申請の手引き」が出典です。このコースの支給要領は令和8年4月8日改正の版を確認しています。

白石みなと
本記事は厚生労働省が公開している2026(令和8)年度版の「両立支援等助成金 支給申請の手引き」(支給要領・コースQ&A・共通事項Q&A)をもとにしています。制度の内容・要件・支給額は年度によって改定されることがありますので、申請前には必ず最新の資料をご確認ください。
なお、対象になり得るかどうかは事業主ごとの雇用環境整備の状況や育児休業の取得実績によって個別の判断になりますので、「対象です」と断定はできません。また、本助成金の支給申請書の作成代行・提出代行は社会保険労務士の独占業務です。当方では申請書の作成・提出の代行は行っておりません。制度情報の提供と、必要に応じた社会保険労務士のご紹介までとさせていただきます。
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白石みなと
いずれも同じ両立支援等助成金のコースですが、対象になる要件はこの制度とはそれぞれ異なります。対象になり得るかは、各制度のページで個別にご確認ください。併給の可否は各制度の実施機関にご確認ください。
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