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人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)とは?事業展開がなくても使える

人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)とは?事業展開がなくても使える

制度概要

対象地域
全国
主な対象者
雇用保険の適用事業所の事業主で、事業展開等に伴う新たな分野で必要となる知識・技能を習得させる訓練、または事業展開を行わずに企業内のDX化・GX化を進めるための訓練を、雇用する労働者に受けさせる事業主

対象となる可能性がある事業者の例です。詳細な要件は本文および公式ページでご確認ください。

補助率
経費助成 中小企業75%・大企業60%/賃金助成 1人1時間あたり中小企業1,000円・大企業500円/設備投資加算 導入費用の50%(中小企業のみ)
上限額
1事業所1年度あたり1億円。ただし実際に受け取れる額は1人1訓練あたりの経費助成限度額で決まり、中小企業は実訓練時間数に応じて30万円(10時間以上100時間未満)・40万円(100時間以上200時間未満)・50万円(200時間以上)、中小企業以外は20万円・25万円・30万円。eラーニング及び通信制は中小企業15万円・大企業10万円、定額制サービスは1人1月あたり2万円
申請時期
訓練日程に応じて個別に設定。計画届・支給申請に期限があります(計画届は訓練開始日の6か月前から1か月前までの間、支給申請は訓練終了日の翌日から2か月以内で厳守)。本文の該当節で条件をご確認ください。

公開日 2026-09-09 / 最終更新日 2026-09-19 / 情報確認日 2026-09-12 / 公式ページを見る

この助成金の結論

福田(聞き手)
白石さん、新しい事業を始める予定はないのですが、社内のデジタル化のために社員へ研修を受けさせたいと考えています。使える助成金はありますか。
白石みなと(補助金活用アドバイザー)
人材開発支援助成金の事業展開等リスキリング支援コースが候補になります。名前に「事業展開」と入っていますが、事業展開をしていなくても使えます。社内のDX化やグリーン・カーボンニュートラル化を進めるための訓練であれば、それだけで入口になります。中小企業なら訓練経費の75%が助成され、訓練中の賃金も1人1時間あたり1,000円が出ます。
福田
調べていると「リスキリング助成金」という呼び方をよく見かけます。これのことですか。
白石みなと
「リスキリング助成金」という名前の制度は、国の雇用関係助成金にはありません。多くの場合、いま挙げた事業展開等リスキリング支援コースを指して使われている呼び方です。

ただし、その呼び方で探しているものが別の制度であることもあります。自治体が独自に出している制度に「リスキリング」を名前に含むものがあり、九州AIナビに収録しているものでは熊本県リスキリング応援補助金がこれにあたります。国の助成金とは実施機関も条件も別の制度です。

名前ではなく、どの実施機関のどの制度かで確かめてください。この記事は、厚生労働省の人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)についてのものです。

福田
名前に「事業展開」とあるので、うちには関係ない制度だと思い込んでいました。ほかにも、名前だけを見ていると見落としてしまうところはありますか。
白石みなと
もう1つあります。このコースには設備投資加算という仕組みがあり、研修の助成金なのに、訓練で実際に使う機器・設備の導入費用の50%が、通常分とは別枠で追加支給されます。中小企業だけが対象で、支給対象労働者1人につき15万円、10人以上なら150万円が限度です。「研修の費用しか出ない」と思っていると、この枠には気づけません。ただし後で述べるとおり、この加算には賃上げが条件として付いてきます。
福田
使える期間には限りがあると聞きました。いつまでの制度なのでしょうか。
白石みなと
パンフレットには令和4年度から令和8年度までの期間限定の助成金として創設したと書かれています。令和8年度、つまり2026年度が最終年度にあたり、延長されるかどうかは公表されていません。計画届は訓練開始日の1か月前までに出す必要がありますので、講座を選び、届出を出し、訓練を実施して支給申請をする、という段取りを逆算すると、年度内に一巡させる余裕はあまりありません。

「事業展開」をしていなくても使える三つの入口

福田
「事業展開をしていなくても使える」というのは、パンフレットのどこを読めばそう言えるのでしょうか。根拠になる一文を見せてください。
白石みなと
基本要件のところです。対象になるのは、OFF-JTで実施され、実訓練時間数が10時間以上あり、そのうえで次の①から③のいずれかに当てはまる訓練とされています。「いずれか」ですから、3つ全部を満たす必要はありません。①だけが事業展開の話で、②と③は事業展開を前提にしていません。社内のDX化を進めるための訓練なら②で入れます。
入口 対象になる訓練 事業展開
① 事業展開 事業展開を行うにあたり、新たな分野で必要となる専門的な知識及び技能の習得をさせるための訓練 必要
② DX化・GX化 企業内のDX化やグリーン・カーボンニュートラル化を進める場合に、これに関連する業務に従事させる上で必要となる訓練 不要
③ 人事・人材育成計画 企業内の人事及び人材育成に関する計画に基づき、今後従事することが予定される職務に必要となる訓練 不要
福田
①の「事業展開」というのは、新規事業の立ち上げのような大がかりな話に限られるのでしょうか。
白石みなと
定義は「新たな製品を製造し又は新たな商品もしくはサービスを提供すること等により、新たな分野に進出すること」ですが、事業や業種を転換すること、既存事業の中で製品やサービスの製造方法・提供方法を変更する場合も事業展開にあたる、と書かれています。例として、飲食店がテイクアウトの製造販売を始めるため、予約システムの構築やアプリ開発の講座を受講する、という規模のものが挙げられています。
福田
①を選ぶ場合、事業展開の時期に決まりはありますか。すでに済ませてしまった会社は使えないのでしょうか。
白石みなと
ここは見落としやすいところです。①については、訓練開始日から起算して3年以内に実施する予定のもの、または6か月前までに実施したものに限る、と書かれています。すでに事業展開を終えた会社でも、6か月前までのものなら入口が残っているということです。逆に、いつやるとも決まっていない構想段階では①には乗りません。②のDX化には、この時期の縛りがありません。建設業でドローンやBIMの講習を受講させる例、小売業の営業部門がWEB集客のノウハウを習得する例などが挙がっています。

③の入口だけ、手続きが一段重くなる

福田
②と③はどちらも事業展開が要らないのなら、自社にとって使いやすいほうを選べばよい、ということでしょうか。
白石みなと
同じではありません。③を選んだ場合だけ、手続きが一段重くなります。中小企業の場合、③にあたる訓練は認定経営革新等支援機関による計画の確認を事前に受ける必要があります。職業訓練実施計画届、事業展開等実施計画、人事及び人材育成に関する計画、訓練カリキュラム等をその機関に提出し、確認を受けたうえで労働局へ進む流れです。②にはこの工程がありません。
福田
確認を受けたあとにも、③だけの手続きがあるのですか。守れなかった場合はどうなるのでしょう。
白石みなと
2つあります。受講予定者から訓練受講に関する承諾書を取ること、そして訓練終了後に、支給対象労働者を計画で予定していた職務に実際に従事させたうえで実施状況報告書を出すことです。合理的な理由がなく従事させていない場合は、不支給決定または支給決定取消とされ、従事の前後で合理的な理由なく賃金や手当が引き下げられている場合も同じ扱いです。なお③の「異なる職務」かどうかは、厚生労働省編職業分類の小分類で判断します。

いくら出るのか

福田
金額の全体像を教えてください。中小企業と大企業で差はありますか。
白石みなと
助成は通常分と設備投資加算の2階建てで、企業規模による差があります。まず通常分が下の表です。eラーニングによる訓練等、通信制による訓練等、定額制サービスによる訓練、育児休業中訓練は経費助成のみで、賃金助成は出ません。受講形式を決める前に、ここは確認しておいてください。
企業規模 経費助成 賃金助成(1人1時間当たり) 設備投資加算
中小企業 75% 1,000円 50%
大企業 60% 500円 なし
福田
率だけでなく、金額の上限もあるのでしょうか。
白石みなと
1人1訓練あたりの経費助成限度額があり、実訓練時間数の区分で決まります。定額制サービスによる訓練は1人1月あたり2万円、eラーニングおよび通信制は中小企業15万円・大企業10万円という別の限度額です。専門実践教育訓練の指定講座は一律で「200時間以上」の区分として扱われます。賃金助成のほうは1人1訓練あたり1,200時間が限度時間です。
企業規模 10時間以上100時間未満 100時間以上200時間未満 200時間以上
中小企業事業主 30万円 40万円 50万円
中小企業以外の事業主 20万円 25万円 30万円
福田
上限1億円という数字を見かけましたが、これは現実に届くものなのでしょうか。
白石みなと
枠の大きさを示す数字と考えたほうがよいと思います。1事業所が1年度に受給できる助成額は1億円が上限で、この1年度は支給申請日を基準に4月1日から翌年3月31日までを指します。ただし経費助成は1人1訓練あたり最大50万円ですし、受講回数も1労働者につき1年度で3回まで、うち令和8年8月3日以降の計画届に基づくeラーニングは1年度で1回までです。

研修費だけではない:設備投資加算という別枠

福田
先ほどの設備投資加算について、詳しく教えてください。何をすると受け取れるのですか。
白石みなと
賃金要件または資格等手当要件のいずれかを満たし、事業所に事業展開促進機器等を導入した場合に、通常分とは別に割増し分を追加で支給申請・受給できる仕組みです。訓練側にも要件があり、事業展開・DX化・GX化にかかる訓練であること、通学制または同時双方向型の通信訓練であること、実技の訓練等で機器・設備等を実際に使用するものであることの3つが必要です。③の人事及び人材育成に関する計画に基づく訓練は、加算の対象から除かれます。
福田
「賃金要件または資格等手当要件」というのは、具体的に何を約束することになるのでしょうか。
白石みなと
訓練が終わったあとに、賃金を上げるか、手当を新たに払うか、どちらかを実行するという約束です。機器代の50%が出る代わりに、賃上げが条件として付いてくると読んでください。どちらも訓練終了日の翌日から1年以内が期限で、すべての対象労働者について満たす必要があります。増額後に合理的な理由なく賃金を引き下げたり手当の支払いをやめたりした場合は、増額したものとして認められません。
要件 満たすべき内容
賃金要件 毎月決まって支払われる賃金を、訓練終了日の翌日から1年以内に5%以上増加させる。改定後3か月間と改定前3か月間の総額を比べて判定する
資格等手当要件 資格等手当を就業規則・労働協約・労働契約等に規定した上で実際に支払い、毎月決まって支払われる賃金を3%以上増加させる
福田
機器のほうの条件も教えてください。いくらくらいの買い物が対象になりますか。
白石みなと
導入費用が10万円以上であること、導入方法が購入、リース契約、ライセンス契約、既存の機器・設備等の変更であることが要件で、データベース構築、システム導入、専用アプリ開発に係る経費も対象と明記されています。限度額は1訓練1事業所あたり、支給対象労働者1人につき15万円、10人以上なら150万円です。パンフレットには、2人で100万円の機器を1台買った場合は30万円までという例が載っています。50%という率より、1人15万円という限度が先に効きます。

加算の対象にならない機器と処分制限

福田
どんな機器でも対象になるわけではないですよね。外れるものを先に知っておきたいです。
白石みなと
対象とならないものが14項目、具体的に列挙されています。実務で影響が大きいものを抜き出しました。パソコン・タブレット・スマートフォンが名指しで外れているところは、先に知っておいたほうがよいと思います。デジタル人材の訓練だからパソコンが要る、という発想で見積もりを組むと、そこは加算に乗りません。空調や照明のような快適化目的のもの、他の助成金の支給に係るものも外れます。
対象とならない機器・設備等(抜粋) 補足
通常の事業活動の維持のために用いられるもの 汎用事務機器、ネットワーク環境整備の導入・更新等
パソコン、タブレット端末、スマートフォン及びその周辺機器 名指しで除外されている
経営コンサルタント料、相談料、顧問料等の無形商材 通常分の対象経費でも同様に外れる
福田
導入したあとに、その機器を売ったり入れ替えたりしてもよいのでしょうか。
白石みなと
処分制限があります。導入日の翌日から起算して1年を経過するまでは、導入した事業展開促進機器等を処分してはいけません。ここでいう処分には転用、譲渡、交換、貸付、廃棄、解約、担保に供することが含まれます。災害等のやむを得ない事由の場合は報告書の提出、それ以外で処分するなら加算額の全部に相当する金額を返還したうえで承認を受ける必要があります。設備投資加算を申請する場合は本社一括申請ができない点にもご注意ください。

手続きと期限

福田
実際の流れを教えてください。最初に何をすればよいでしょうか。
白石みなと
出発点は職業訓練実施計画届(様式第1-1号)を労働局へ出すことです。提出できるのは訓練開始日の6か月前から1か月前までの間で、遅れても、早すぎても受け付けられません。「早めに出しておこう」という判断が、そのまま期間外になります。提出できる期間は訓練計画届の提出期間カリキュレータで計算できます。
福田
計画届が受理されれば、あとは助成が決まったものと考えてよいのでしょうか。
白石みなと
決まりません。令和7年度以降は審査が支給申請後に一括して行われることになり、計画届を提出したことをもって助成金が確実に支給されるものではありませんと明記されています。支給申請は訓練終了日の翌日から2か月以内です。郵送で出す場合は消印有効ではなく、労働局に到達した日が提出日になります。

よくある質問

福田
最後に、研修を検討している会社からよく聞かれそうな点を、まとめてもらえますか。
白石みなと
4つ挙げます。

Q. このコースは、いつまで使えますか。 パンフレットには令和4年度から令和8年度までの期間限定の助成金として創設したと書かれています。令和8年度(2026年度)が最終年度にあたり、延長されるかどうかは公表されていません。計画届は訓練開始日の1か月前までに出す必要があるため、講座を選び、届出を出し、訓練を実施して支給申請をする、という段取りを年度内に一巡させる余裕はあまりありません。

Q. 生成AIの研修は対象になりますか。 訓練の中身によって分かれます。令和8年8月3日の改正で、DX化・GX化に関する訓練のうち、職業や職務に間接的に必要となる知識・技能を習得させるもの、職業の種類を問わず職業人として共通して必要なものは対象外とされました。厚生労働省は、汎用的なプロンプトの作り方を学ぶ訓練を対象外、営業担当者が生成AIで商品提案書の構成案作成や文章生成を学ぶ訓練を対象、という具体例を示しています。詳しくは生成AI研修が助成の対象外になる線引きをご覧ください。

Q. 既存のソフトの操作方法を覚える研修は対象になりますか。 対象になりません。パンフレットには、単にデジタル機器を使用して文章・数値の入力や書式・レイアウトの変更程度の初歩的な操作を行う訓練、既存のアプリやシステムを購入してその操作方法を習得する場合、コンサルタントによる指導は対象にならない、と書かれています。

Q. 訓練を途中で休んだ場合はどうなりますか。 受講時間数の要件があります。通学制または同時双方向型の通信訓練の場合、対象労働者は実訓練時間数の8割以上を受講している必要があります。eラーニングおよび通信制による訓練等の場合は、訓練実施期間中に修了していることが要件です。なお訓練の費用は、支給申請までに全額を支払い終えている必要があります。

福田
よく分かりました。正確な情報はどこで確認できますか。
白石みなと
厚生労働省が公開しているパンフレット(詳細版)が一次情報です。

https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/001731978.pdf

福田
ありがとうございました。
白石みなと
本記事は、上記パンフレットの記載(2026年9月9日に本文を確認)をもとにしています。このパンフレットの内容は、令和8年8月3日以降に提出された職業訓練実施計画届に基づく訓練が対象です(経過措置があります)。制度の内容は改正されることがありますので、申請前には必ず最新版と、事業所を管轄する都道府県労働局へご確認ください。

なお、対象になり得るかどうかは事業主ごとの個別の判断になりますので、「対象です」と断定はできません。助成金の申請書の作成・提出の代行は社会保険労務士の独占業務です。当サイトでは代行は行っておらず、制度情報の提供と、必要に応じた社会保険労務士のご紹介までとさせていただきます。

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